電子帳票の活用を含む“顧客への積極的な情報開示の取り組み”は、重要な経営課題の1つです。
資産管理業務を専門とする日本トラスティ・サービス信託銀行は、140兆円もの信託財産の管理業務から発生する膨大な量の伝票・帳票を取り扱っている。
日本トラスティ・サービス信託銀行にとっての帳票電子化の意義について、詳しく聞いた。
導入背景
140兆円の資産管理に関わる膨大な伝票・帳票を管理
- 日本トラスティ・サービス信託銀行の業態についてお聞かせください。
当社の業態を一言で言うと、「資産管理業務に特化した信託銀行」と表現できます。
当社は三井住友信託銀行、りそな銀行、三井住友トラスト・ホールディングスの共同出資により設立された信託銀行です。当社の役割としては運用の結果として生じる資金の受け払い、伝票処理、各種書類処理という位置付けになります。
- そうした管理の業務量はどのぐらいになるのでしょうか。
当社が管理している信託財産は合計140兆円に及びます。日本の国家予算(一般会計)が80兆円ですから、いかに巨額かご理解いただけると思います。
140兆円の管理となると伝票処理(帳票業務)だけでも気が遠くなるほど膨大にあります。しかも、今後帳票や書類の量はますます増えていくと予測できます。
- なぜ、そのように予測されるのでしょうか。
顧客ニーズの多様化、管理手法の高度化といった流れがある為、これまで以上に事務ボリューム、帳票が増加していくと予測しています。
このような状況下において電子帳票の導入は、言わば「必然の流れ」でした。
導入ポイント
電子帳票システム導入のメリット
- 日本トラスティ・サービス信託銀行にとって「電子帳票を導入することのメリット」を具体的に記述すると、どうなるでしょうか。
FiBridgeII導入前に予想していたメリットは、以下の3点です。
- コスト削減
- 業務の堅確性の向上
- 情報漏洩防止力の向上
FiBridgeIIを導入して初めて分かった「予想外のメリット」としては、
- 情報活用の推進および業務の活発化
が挙げられます。
また、今後実現していきたい「将来のメリット」は、
- 顧客への情報開示のタイムリー性および正確性の向上
「2~3年で償却できることは最初から見えていた」
- では順々にお伺いします。まずは「コスト削減」について具体的に教えてください。
当社の業務においては、信託法・信託業法・銀行法・銀行兼営法等が要求する各種法定帳簿が発生します。中には、1種類だけで月間19万ページ出力する「巨大帳票」もあります。
これらを紙のままで管理し続けた場合、印刷コスト、輸送コスト、帳票仕分けコスト、倉庫の保管料などが発生します。紙ではなくマイクロフィルムで保管したとしても、依然として焼き付けや保管の費用が発生します。
電子帳票システムを導入すれば、こうしたコストを大きく削減できます。FiBridgeIIについていえば初期導入コスト、維持コストを元に試算しても約2~3年で償却できることが明確でした。ですから、当時の我々にとってはFiBridgeIIのような電子帳票システムは「導入するコストよりも導入しないことの損失」の方が大きかったのです。
導入するコストよりも、導入しないことの損失の方が大きかったのです
(齋藤氏)
導入後の効果
「堅実性の向上」が期待できた
- 次に「堅確性の向上」について教えてください。
業務が正確・確実に行われる状況を、我々の業界では「堅確性が高い」と呼んでいます。堅確とは、堅牢・確実の意味です。
紙の帳票を使って業務を行っている場合、「帳票をキャビネットから取りだして、必要な部分をコピーしてからデータをマージする」というように作業内容や動線が複雑・煩雑になります。これはミスの可能性を高めるため、好ましいことではありません。
一方電子帳票の場合は、机を離れてあちこちに移動することがなくなり、シンプルかつ集中的な作業環境が実現できます。これにより、業務の堅確性が高まると期待できます。
帳票の物理的実体をなくし、紛失による情報漏洩リスクを軽減
- 「情報漏洩防止力の向上」について具体的に教えてください。
これについてはマイクロフィルム(コム)との対比を通じて、順々に説明します。
- 以前は、月間100万ページ分もの帳票をコムに焼き付けていた。これにより、月間数千枚、年間数万枚のコムが発生していた。
- これらコムの保管義務期間は平均で約10年。年金関係の帳票が記録されたコムなどは、半永久的に保管しなければならない。
- しかしながら、コムには紛失リスクが伴う。実際に「コムを誤って紛失」した他社の例が何度か報道されている。
- いくら業務規定を厳しくしても、コムというモノ(物理的実体)がある以上、紛失による情報漏洩リスクはどうしても根絶できない。
FiBridgeIIは他製品と比べてどこが優れていたか
- ここまでで「導入前に予測していたメリット」の詳細が分かりました。続いて、数ある電子帳票システムの中からFiBridgeIIを選択した理由についてお聞きしたいと思います。
電子帳票システムを選ぶにあたっては、FiBridgeIIを含む5製品を相互比較しました。FiBridgeIIが相対的に優れていたのは以下の3点です。
- 検索の高速性
- セキュリティ機能
- 実績
- では、順々にお聞きします。「検索の高速性」について教えてください。
FiBridgeIIの検索の高速性については、テスト環境で「1ヶ月19万枚の帳票が数秒で検索できた」という圧倒的な事実を通じて確信を持ちました。
実際に他行に見学に行って、どのような感想を持ったか
- 梅沢様は、FiBridgeIIユーザーの信託銀行様に、実際に見学に行かれたそうですが、ご感想は。
製品の評価は実際の業務環境で使われている様子を自分の目で見て行うのが一番確実だと思い、FiBridgeIIを導入された銀行に見学に行きました。私はこれまで数10年間銀行のコンピュータ業務の現場に関わってきました。ですから、システムの反応スピードについてはそれなりの判断基準を持っているつもりです。
私の目から見ても、FiBridgeIIの検索スピードは驚くほど速かった。それは実際に見てすぐに分かりました。また使い勝手や運用のし易さについて、見学先の皆さんに質問しても、「FiBridgeIIはいいですよ」と異口同音の回答をいただきました。シンプルな言葉であっても実際の使用者の感想は説得力があります。
検索の速さには大変驚きました
(梅沢氏)
充実のセキュリティ機能と実績
- 「セキュリティ機能」についてはいかがでしょうか。
電子帳票はとても便利なシステムですが、誰もがアクセスできないようにするなどのセキュリティ機能が備わっている必要があります。FiBridgeIIにおいては、以下の機能が的確に備わっている点が評価できました。
- 【詳細なアクセス履歴がとれる】
「誰がいつどんな操作をしたのか」が把握できる。 - 【ユーザー毎(グループ毎)のアクセス権設定】
職責、部署に応じて、閲覧可能な帳票、閲覧不可能な帳票を定義できる。 - 【アクセス権のないフォルダは隠す】
見てはならないフォルダは表示されない。
- 「実績」についてはいかがでしょうか。
多くの金融機関で販売・導入実績があったこと。また、他行での運用方法が事例パンフレットの形で分かりやすく提供されていた点も良かったと思います。
コム時代に比べ「革新的に改善した」こと
- 続いて「使ってみて初めて分かった電子帳票のメリット」についてお聞きしたいと思います。FiBridgeII導入後に「情報活用が大きく進歩した」とのことですが、これは具体的にはどのようなことなのでしょうか。
FiBridgeIIを使って様々な情報が縦横無尽に検索できるようになったことは、以前と比べ格段の進歩です。さまざまな業務上の工夫、例えば帳票をクロス検索してみるといった工夫ができるようになったのです。
コムを利用していた頃は検索に「大きな労力」が必要でした。しかし、電子帳票になってからは、今までと比較して格段に「業務での活用範囲」が広がりました。これは大きな改善です。
日本トラスティ・サービス信託銀行にとって、電子帳票はどのような位置づけにあるのか
- 現在日本トラスティ・サービス信託銀行の経営全体において、電子帳票はどのような位置付けにあるのでしょうか。
現在、FiBridgeIIは内部作業の効率化といういわば「守りの用途」のみに使っていますが、将来的には「顧客へのタイムリーかつ効率的な運用情報の開示」という「攻めの用途」にも活用したいと考えています。
この「顧客への情報提供サービスレベルの拡充かつ高度化」という課題については、当社の中で「数項目ある重要な経営課題のうちの一つ」と位置付けられています。
当社では資金運用を委託しているお客様に向けて運用状況などの各種情報を開示しなければなりません。こうした情報提供が電子的に行われれば、お客様にとって、よりダイレクトで便利なサービスとなります。
これを実現する方策として、お客様にFiBridgeIIの端末を設置していただき、情報を自由に閲覧してもらうというアイディアが出ています。FiBridgeIIにおいてはすでにそれに類する使用実績があるとのことですので、今後の提案に期待したいところです。
今後はお客様へのタイムリーな情報提供に活用していきたいですね
(田川氏)
JFEシステムズへの期待
- FiBridgeIIの製品機能以外のJFEシステムズの「ノウハウ」についてご評価をお聞かせください。
古いシステムから出力される帳票を電子化する際のコンサルティングに付加価値を感じました。当社の帳票の中には、ホストでの印刷を意識した「特殊な設計」の帳票が少なからずありました。そうした「素直には電子化しづらい帳票」について電子化のための具体的な助言をいただきました。多くの導入実績を通じてさまざまな「特殊な設計の帳票」を経験してきたからこそ、そうしたコンサルティングが可能になるのでしょうね。
- 今後のJFEシステムズへの期待をお聞かせください。
先にも述べたとおり、今後電子帳票システムには単なるコスト削減や効率化といった内部用途のみならず、お客様への積極的な情報提供という「付加価値の創出」の用途が期待されています。JFEシステムズには、今後も優れた技術とサービスを継続して当社の電子化への取り組みをサポートしていただければと思います。期待しています。
- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※ 実績紹介に記載された情報は取材時点のものであり、お客様の社名などが閲覧される時点で変更されている可能性がございますがご了承ください。