アコムでは短期間で電子帳票システムを構築し、年間約1,200時間を削減しました。
三菱UFJフィナンシャル・グループに属するアコム株式会社(以下、アコム)は、大手消費者金融のなかで利用者数、自動契約機設置台数が最も多く、貸付残高も一位となっています。業界最大手のアコムはホストプリンター廃止のためにFiBridgeIIを採用し、帳票の電子化に取り組まれました。
その経緯と効果について、システム本部 システム運用部 センター運用チーム 担当次長 佐藤 孝広 氏(写真右)と、勘定系システムの運用を担当している株式会社アイネット DX本部 FinTechソリューション事業部 第2システム部 課長 大嶋 智子 氏(写真左)に詳しく伺いました。
アコムの業態
- アコムの事業内容について教えてください。
アコムは、ローン事業、クレジットカード事業、信用保証事業、海外金融事業、債権管理回収事業を行う貸金事業者です。
中でもローン・クレジットカード事業、信用保証事業、海外金融事業の3つは中核を担う事業となっています。ローン・クレジットカード事業はBtoCのビジネスで、個人のお客さまにカードローンやクレジットカードの発行といったサービスを提供しています。対して信用保証事業はBtoBで、提携する銀行が販売するカードローン商品の債務保証をアコムが行い、銀行から保証料をもらうというものです。海外金融事業については、現在は東南アジアでマーケットを開拓し、タイ、フィリピン、マレーシアでローン事業を展開しています。

社内の全帳票を電子化
- アコムではFiBridgeIIをどのように活用されていますか。
アコムでは、ホストプリンターを廃止することを目的として、2023年10月からFiBridgeIIを使って社内の260帳票すべてを電子化しました。導入前は、夜間に出力センターでホストプリンターから帳票を出力して仕分けし、7拠点にあるそれぞれの部署に配送していました。各拠点では紙帳票の内容を確認した後に、ナンバリング・ファイリングなど紙管理ならではの対応に追われていました。出力帳票は年間で17万3千ページにも及びました。
- 帳票を電子化するに至った経緯について教えてください。
アコムではメインフレームを利用しています。メインフレームとホストプリンターはインタフェースを用いて接続していましたが、その変換器の保守の終了時期が1年後に迫っていました。変換器は高額だったこともあり、これを機に変換器を使わない基盤を整備したいと考えました。そこで、2台あったホストプリンターを廃止して紙出力、配送を取りやめ、帳票の電子化に踏み切りました。
4つの条件で製品を選定
- 製品はどのように選定されましたか。
以下の条件で比較検討しました。
1.短期間で導入できること
変換器の保守終了時期まで1年しかありませんでした。その前に構築を完了させ電子化による運用を開始できるよう、短期間で導入できる製品であることが必須条件でした。
2.メインフレーム環境での導入実績が豊富なこと
リリースまでの期間が短かったので、メインフレーム環境と製品との間に相性の問題が発生してその解決に時間を取られるのは避けたいと考えました。そのため、メインフレーム環境で導入された実績が多い製品であることも条件としました。
3.ベンダーのサポートが手厚いこと
これも導入までの期間が短いことと関連していますが、ベンダーが協力して手厚くサポートしてくれる製品を選びました。

「構築ベンダーのサポートもあり、短期間でリリースできました」佐藤 孝広 氏
4.帳票イメージが従来の紙の印刷イメージと差異がないこと
作成される帳票イメージが、ホストプリンターで印刷していた紙のものと差異がないことも重要でした。形が違ったり、枠がズレたりしていると作業効率が落ちる可能性があるからです。選定した複数の会社にサンプルデータを渡して実際に電子帳票を作成してもらい、紙の帳票と比較しました。これらの条件をすべて満たしていたのがFiBridgeIIでした。
- FiBridgeIIを選定された決め手は何ですか。
FiBridgeIIは金融機関での導入実績が豊富で、サンプルデータを用いたテストでも出力イメージが紙の帳票と同じだったのはFiBridgeIIだけでした。また、JFEシステムズでは、技術担当者がリリースまで継続的に支援するとのことで、スムーズな導入が期待できました。
- 導入にあたって工夫されたことはありますか。
アコムではメインフレームをオープン化する構想があります。オープン化しても今回の帳票基盤がそのまま使えるように、勘定系システムと帳票基盤を分離して構築しました。メインフレームとオープン化システムどちらからでも使用が可能な帳票基盤にすることで、今回の対応が将来不要にならないようにしました。
- 販売代理店であるアイネットの対応はいかがでしたか。
アイネット大嶋氏とは当社では初めての情報系システムを構築し、それから約20年ぶりの再会でした。お互い沢山の開発案件やシステム構築に携わってきており、成長を確認できる機会となりました。今回の案件はメインフレーム特有の仕様とオープンシステムの構築の両方のスキルが必要となるため、短期間で移行ができたのは製品だけではなく構築ベンダーのおかげだと感謝しています。
導入効果 ~年間約1,200時間、および金額にして数百万円を削減
- FiBridgeIIの導入効果について教えてください。
以下のような定量効果と定性効果が出ています。
1.定量効果
定量効果としてコスト削減を挙げることができます。まず、ホストプリンターを廃止できたことで、その維持費を削減することができました。次に、紙出力に伴うコスト、出力費用、帳票の仕分けや管理・保管に伴う人件費、各拠点への配送費も削減できています。
帳票を印刷して配送するまでの工程では、年間546時間を削減できました。また、帳票を受け取った後のナンバリング・ファイリングなどの保管作業は、それぞれ年間437時間、176時間の削減となっています。これらだけで、年間約1,200時間削減できました。その他配送費など数百万円は削減できたことになります。
2.定性効果
定性効果としては、始業後すぐに帳票を確認することができるようになったことが挙げられます。従来の紙帳票の運用では出力センターで印刷して、翌日に配送しますので担当者が受け取るのは昼過ぎでした。電子化の運用では勘定系システムでFiBridgeⅡがデータを受けとると、すぐに画面で確認できるようになりました。

「FiBridgeIIは、リリース後も不具合が発生することなく安定稼働しています」大嶋 智子 氏
- JFEシステムズのサポートはいかがでしたか。
JFEシステムズの技術担当者は、導入までの工程をアコム向けに細かくスケジューリングするとともに、各段階でやるべきことを詳しく説明してくれました。それによって、作業分担と時期が明確になり、限られた時間で効率的に作業を進めることができました。予定通りリリースできたのは、技術担当者のサポートのおかげだと感謝しています。
今後の取り組み予定とJFEシステムズに対する期待
- 今後の取り組みのご予定を教えてください。
前述のようにアコムではメインフレームのオープン化を検討しています。一気にオープン化を進めることは難しいですが、帳票用のデータがあればFiBridgeIIで電子化できるので、現在のようにメインフレームでデータを扱う必要はありません。データ作成をメインフレームから移行させるなど、できるところから進めていきたいと考えています。
- JFEシステムズに対する今後の期待について教えてください。
三菱UFJフィナンシャル・グループではセキュリティの観点から端末へのクライアントソフトのインストールやインターネットの閲覧が制限されています。そのような環境でも、FiBridgeIIをスムーズに使えるようにしてもらえると嬉しいです。また、電子化している帳票の一部に電子回覧(ワークフロー)で対応したいものもあります。複雑なフロー設定が組織構成にあわせて必要になりますので、対応を期待しています。
JFEシステムズには蓄積した豊富なナレッジを共有してもらえると助かります。今後ともよろしくお願いいたします。
- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、おおよその数で記述しています。