情報セキュリティー強化の目的は「個人情報保護」です。
電子帳票システム「FiBridgeII」を改善の中心に、帳票業務プロセスの
改善と一層のセキュリティー強化を果たしました。
地域経済振興の発展に根ざし、多様化する利用者ニーズを捉えた金融商品を提供する島根銀行。企業価値向上の主柱は「リスク管理の高度化」と位置付け、積極的な顧客情報保護の取り組みに乗り出した。 島根銀行が選んだ、電子帳票システム「FiBridgeII」。この製品の「何」が島根銀行に選ばれたのか?
総合企画グループの松井和城次長(写真右)、業務管理グループの飯塚貴久部長、同グループの松本壮司氏(写真左)に詳しく聞いた。
本店所在地:島根県松江市東本町2-35
ホームページ:http://www.shimagin.co.jp/
導入背景
リスク管理の高度化は“個人情報の塊”である帳票類の電子化が鍵に
- なぜ、島根銀行は「電子帳票システム」の導入を検討されたのでしょうか?
銀行業務における「帳票」の位置付けはとても重要なものです。 なぜなら、取引履歴を記録する「還元帳票」、税法上整備・管理が義務付けられている「法定帳票」、これら帳票に記載される情報は銀行業務の生命線であり、銀行業務そのものであると言い換えられます。
こうした帳票類の管理/保存の業務はどうしても煩雑化しますし、その煩雑さが「プラスの効果」をもたらすことはありません。
島根銀行の電子帳票導入目的は,単なる業務効率化だけではありません。
(松井氏)
事実、その弊害ともいえる事故(お客さま情報の紛失)が2006年に発生してしまいました。(2006年11月 同行HPにてリリース)
このような事態を厳粛に受け止めた島根銀行は、再発防止を軸とした「リスク管理の高度化」の対策を講じ、その実現には『個人情報の塊である帳票管理の高度化が不可欠である』と考え、電子帳票システムの導入検討に取り組みました。
検討のポイント
検討のポイントの柱は、「個人情報の保護」と「事務処理の効率化」
こうした背景を踏まえ、具体的な検討のポイントは大きく分けて二つあります。
個人情報の保護
- 個人情報の紛失事故を防止できるよう、業務を徹底して改善したい。
- 個人情報保護法の施工に合わせ、帳票類をより厳密に管理したい。
事務処理の効率化と経費削減効果
- 還元帳票や法定帳票簿などの帳票類を電子化し、業務を効率化したい。
- 帳票類の仕分け業務/配送業務/FAXによる通達業務を効率化したい。
- 上記の実現によるオペレーション・コストを軽減したい。
まず、第一のポイントは「個人情報の保護」です。時期的にも個人情報保護法の施行も重なり、検討過程では多数のリスク・ポイントが挙げられました。
例えば、FAXを使った通信の場合、休日前に資料を送信すると、それが機器上に放置されることになりますので、結果的に情報が漏洩するリスクが高まります。 このようなリスク・ポイントをひとつ一つ洗い出しました。
次に、第二のポイントは「事務処理の効率化」です。これまで島根銀行では、本店で大量印刷した「還元帳簿」を支店毎に仕分けしてトラックで輸送しており、離島にある支店は定期連絡船を利用するなどして輸送していました。
また、緊急性の高い資料についてはFAXを利用し通達していました。
こうした輸送・通達は、煩雑なオペレーションを要求しますから、事務処理の効率化とは業務フローの合理化だと位置付け、既存業務の内容を徹底して見直しました。
そして、このような検討の過程で何度も業務責任者とヒザをつき合わせてディスカッションを交わし「全ての帳票を電子化する事は非効率」という結論に行き着きました。
「電子帳票」と「紙帳票」の共存がベストという結論
その理由としては、仮に全ての帳票を電子化することが技術的に可能であっても、それによって業務効率が損なわれてしまっては元も子もない。
何より、行外へ提出する書類などの印刷物が「0」になるわけではないので、「電子化帳票を用いて行うべき業務」と「印刷すべき業務」という二つのポイントを分けて検討する必要がありました。
- 具体的にはどういう事ですか?
簡単に言いますと、電子帳票を用いて行うべき業務には「電子帳票システム」。 印刷すべき業務には「プリント管理システム」というように、機能に対して要求する内容を明確化して、個別に連動/連携が必要な業務を検討するということです。
導入のポイント
ポイント1:適応性面(既存環境との連携性)
「電子帳票システム」の検討を進めていくにつれ、「プリント管理システム」との連携も重要なポイントであることが分かってきました。
その検討においては、「FiBridgeII」との連携に加え、既存のプリンターを有効活用や、優れたセキュリティ機能などを考慮し、リコー社の「Ridoc Print Linkage」を選択しました。
両システムが機能的に連動することで紙出力の継続を決めた帳票でも「物理的な情報漏洩リスク」(=帳票の放置など)を低減することが可能になります。
さらに、営業日の朝に各支店のプリンタで決められた帳票を印刷するといった「印刷時期」の指定管理も可能になるなど、帳票業務全体のセキュリティレベルを向上させることができます。こうした「細かな部分まで行き届いた設計」は、導入を検討する側に安心感を与えてくれた大きなポイントです。
ポイント2:リソース面(保持データの高い圧縮率)
電子帳票化に際し「過去帳票の電子化」は目的の一つです。 となると、過去分の保持データが肥大化する事は、DBリソースの過剰消費や、通信インフラを圧迫することで業務へ影響を及ぼしかねないため、慎重に評価しました。
この点でも「FiBridgeII」は良く考えられた製品でした。他の製品とは比べ物にならない「高いデータ圧縮率」にはとても満足しています。
ポイント3:操作性面(インターフェースと処理速度)
帳票業務の内容を考えると、やはり「検索中心型」のオペレーションです。
従いまして、電子帳票システムのユーザーインターフェースは「直感的」なものでなければならないですし、処理速度も「適切」なものでなければなりません。
『せっかく電子帳票化したのにこんなに操作感が悪いのでは意味がない』や、
『せっかく電子帳票化したのにこんなに時間がかかるのでは紙帳票の方がマシ』となっては、それこそ本末転倒です。
実際に操作性や処理速度を確認したところ、とても直感的で快適なものでした、FiBridgeIIはこの点でも情報の構造化階層(ネスト)も三階層と適度に抑えられており、データ構成の良さが操作性に出ているな、と感心しました。
業務システムは「導入して終わり」ではない
JFEシステムズ(FiBridgeII)は、保持データの圧縮率や、優れたインタフェース等などの「製品の機能」には大変満足しています。
また、「プリント管理システム」との連携に前向きな姿勢を見せてくれたことについて、業務システムは「導入して終わり」ではありませんので、こうした「企業としての取り組み姿勢の良さ」は、重要な導入ポイントの一つとして付け加えさせて頂きたいですね。
(コメント:業務管理グループ 飯塚貴久部長)
導入後の効果
- それでは、「FiBridgeII」を導入した効果についてお聞かせ下さい。
電子帳票システムのカットオーバーからそれほど日数が経過していませんので、具体的な評価値や定性的な効果値は十分に整っていませんが、確実な手応えを感じています。
まず、帳票類を保管していた場所についてですが、各営業店で収納場所が空いたため、空きスペースの有効活用が可能になりました。
次に、行員が帳票を綴じる作業や、帳票を検索する作業などの事務負担が大幅に軽減されましたし、既存のホストからの印刷業務にかかる出力コスト(トナー費・用紙費)が現状で約30%減となり、来期は約50%減となる試算です。
電子帳票システムの効果は着実にしっかりと出始めています。
(松本氏)
また、こうした直近の可視効果に限らず、現時点で「還元帳票」を中心に全帳票(923帳票)に占める、159帳票が電子化されました。今後のフェーズで更に電子化が進むことを織り込みますと、中長期的な導入面でも効果がとても楽しみですね。
システムに対する情報リテラシーが格段に向上
これは「FiBridgeII」の副次的な効果になるのですが、今回のシステム導入に際し、各営業店の担当者らと幾度となく電子帳票の議論・協議を重ねました。
こうした泥臭い検討の甲斐あり、島根銀行にとって「情報システムとセキュリティ」の実践的な考え方が積み上ったと感じています。
その効果として、「セキュリティに対する考え方」(事実、運用中のセキュリティポリシーに新たな項目が追加された)、「コストに対する考え方」など、情報システムに対する行員のリテラシーが今まで以上、格段に向上したという点も「導入の効果」として付け加えさせて頂きたいですね。
(コメント:業務管理グループ 飯塚貴久部長)
今後の期待と展望
課題がクリアできたことで、これまで気にしていなかった業務が気になり始めた
- 今後のJFEシステムズへの期待などありましたらお聞かせください。
電子帳票システムの導入により島根銀行で懸案だった「課題」の一部がクリアできました。それはとても喜ばしい事なのですが、既に現場サイドから「更なる改善の要望」が上げられています。
これは決して、システム的に問題があるという類の改善要望ではなく、課題としていた問題(帳票の電子化)がクリアできたことで、これまで気にしていなかった(手が回らなかった)業務が気になり始めた前向きな要望です。
戦略的な取り組みを実現するため、JFEシステムズには技術力と提案力を期待します。
(松井氏)
また、既存帳票の電子化も着々と進行し、次期フェーズでは過去帳票の電子化も計画しています。こうした「直近の課題達成」と「将来的な計画実現」の下支えをお願いしたいと考えています。
JFEシステムズの「技術力」と「提案力」に一層の期待
今後の展望として、財務情報系システムと電子帳票系システムとのデータ連携を計画しています。 これも島根銀行にとって非常に重要な施策の一つです。こうした戦略的な「取り組み」を実現するには、「技術力」と「提案力」がカギとなります。 今後も、JFEシステムズ社に期待しています。
- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※ 実績紹介に記載された情報は取材時点のものであり、お客様の社名などが閲覧される時点で変更されている可能性がございますがご了承ください。