生産性を向上させることで取扱量倍増にも耐えうる業務基盤として次世代システムを構築し業務の標準化と経営情報の可視化を実現
株式会社マクニカについて
最先端の半導体、ネットワーク商品に技術的付加価値を加えて提供してきた株式会社マクニカ。
同社は、2025年までに取扱量が2倍以上に成長しても、生産性を向上させることで業務を回せる業務基盤の確立に向けて、2018年より次世代システムの導入プロジェクトを開始。JFEシステムズの支援のもと、サプライチェーン情報を一元管理するSCMシステム、複数の業務システムのデータを集約する統合分析基盤と統合マスターを構築しました。
SCMによる需要予測で納期短縮や在庫削減などを効率化。また事業部ごとに分断されていた情報を集約して多角的な分析とレポート作成工数の削減を実現しました。
会社情報
設立
1972年10月30日
資本金
111億9,426万8,000 円(2022年3月31日現在)
本社所在地
神奈川県横浜市
Webサイト
事業内容
半導体・集積回路などの電子部品の輸出入、販売、開発、加工、電子機器並びにそれらの周辺機器及び付属品の開発、輸出入、販売、その他
導入ポイント
- ・需給計画業務の標準化/効率化に向けてSCMシステムを新規構築
- ・部門ごとに管理していたレポートを集約し、統合分析基盤を構築
- ・顧客、商品、仕入先等のマスターを統合して各種システムと連携
ビジネスの拡大に向けて次世代システムの導入へ
最先端の半導体、電子デバイス、ネットワーク、サイバーセキュリティ商品に技術的付加価値を加えて提供してきたマクニカ。従来からの強みであるグローバルにおける最先端テクノロジーのソーシング力と技術企画力をベースに、社会課題の解決に貢献すべく、スマートファクトリー、CPS セキュリティ、スマートシティ/モビリティ、ヘルスケア、サーキュラーエコノミー、フード・アグリテックの6つの事業テーマを掲げ、サービス・ソリューションカンパニーへの変革を目指しています。
マクニカでは、急速な事業環境変化に対応するために各現場では改善活動を繰り返してきました。しかしその結果、個別最適化が進み全社での業務効率の低下が課題となっていました。IT本部IT 統括部 ITシステムマネジメント部 部長の廣瀨 一道氏は「システムとシステムをつなぐのが人の仕事となってしまい、情報共有手段の多くがExcelでした。レポートを作成する時も各部門で似たような資料を個別に作成する必要があり、業務の非効率性が目立ってきていました」と語ります。
折しも2010年代後半から世界中で半導体需要が高まり、同社の半導体事業に追い風が吹き始めていました。セキュリティビジネスなどの拡大を受けて、ネットワーク事業も成長。加えて新規事業戦略で定めたサービス・ソリューションビジネスを推進するためにも、全社視点でシステムを見直す必要があったとIT本部 本部長の安藤 啓吾氏は語ります。
「ビジネスの拡大に対応していくには、業務を効率化して生産性を高める必要があります。2025年までに取扱量が2018年の2倍増となっても、業務に耐えうる業務基盤を確立するべく、次世代システムの導入プロジェクトを立ち上げました」
IT本部 本部長
安藤 啓吾 氏
IT本部 IT統括部
ITシステムマネジメント部
部長
廣瀨 一道 氏
Excel による需給予測からの脱却に向けSCM システムを新規で構築
次世代システムは、ERPのSAP S/4HANAを中心に、SCM、CRMなどの業務系システムと、統合分析基盤や統合マスターなどの情報系システムで構成される全社統一のシステムです。最初に国内のすべての商流に関わる業務を対象に導入し、最終的にはグローバル拠点に展開する構想でスタートしました。
プロジェクトは、SCMシステムの先行稼働を目指して、2018年10月から着手しました。導入目的は、半導体事業における需給計画業務を標準化・効率化することにあります。従来環境の課題について、IT本部 IT統括部 ITエンジニアリング部 データエンジニアリング課の白ヶ澤 直樹氏は次のように語ります。
「半導体事業部には約200の仕入先があり、それまでは担当者が個々にExcelのマクロを組んで需給予測の計算をしていました。仕入先によっては数十万行分のExcelデータがあり、分析のための資料作成に2週間程かかるものもあります。半導体需要の増加に対応するためには、Excelから脱却し、属人的な業務を解消する必要がありました」
IT本部 IT統括部
ITエンジニアリング部
データエンジニアリング課
白ヶ澤 直樹 氏
技術検証や複数回に及ぶ打ち合わせを経て選定した結果、SCMシステムにはKinaxis社の「RapidResponse」を採用し、導入パートナーにJFEシステムズを採用しました。パートナーとして採用した理由は、実績に基づく会社と人に対する信頼性の高さだったと廣瀨氏は振り返ります。
「JFEシステムズに対しては2016年に管理会計用データ活用基盤をSAP BusinessObjectsで構築した時から、業務への理解や、プロジェクトマネージャー(PM)の対応を評価していました。今回はRapidResponseの導入実績、PMやリーダーの経験と人柄、当社の想い・文化を理解した提案等を考慮して採用を決めました」RapidResponseの導入では、要件定義に時間をかけて必要な機能を徹底的に精査。最小限の機能でスモールスタートし、ユーザーが慣れてから徐々に機能を拡張する方針としました。「RapidResponseは多機能で応用範囲が広く、メニューも豊富です。そのためユーザーがすべての機能を初めから利用するには、ハードルが非常に高いものでした。そこで最初は機能を絞ることでなるべく早くRapidResponseに慣れてもらうことを優先しました」(白ヶ澤氏)
RapidResponseの要件定義では現場の代表者を交えて議論しながら、業務を標準化しました。またユーザーがスムーズに移行できるよう、構築初期の段階からトレーニングも行いました。
「JFE システムズの担当者に講師をお願いし、ほぼ毎週、多い時は週2~3回の頻度でマンツーマンに近い形でトレーニングを実施しました。現場のキーマンが成功体験を獲得し、現場に戻ってメリットを語ることで、徐々に浸透していきました」(白ヶ澤氏)
分散しているデータの見える化に向け統合分析基盤と統合マスターを構築
マクニカはSCMシステムの構築とともにCRMシステムも構築を並行させ、構築期間の後半からはデータの集約と見える化を目的に統合分析基盤のプロジェクトも開始しました。2020年2月よりERP、統合分析基盤、統合マスターの導入を開始。そこで改めて各システムのベンダーを選定し、統合分析基盤と統合マスターの構築パートナーにJFE システムズを採用しました。
「管理会計用のBIツールにSAP BusinessObjectsを利用してきた実績から、統合分析基盤でもSAP BusinessObjectsを活用することとし、経験豊富なPMを中心とした体制かつ、実績・ノウハウもあるJFEシステムズに構築を依頼しました」(廣瀨氏)
データの集約に向けた具体的な取り組みについて、IT本部 IT統括部 ITシステムマネジメント部 コーポレートシステム課 課長の鈴木 良史氏は次のように語ります。
「これまで、受注、売上、在庫といったレポート類が事業部や部門ごとにあり、1 つの目的に対して複数のレポートが存在していました。プロジェクト開始時に現場にアンケートを取ったところ1,026本ものExcelレポートがあったため、重複しているレポートを統合し、スピーディな情報共有の実現を目指しました」
IT本部 IT統括部
ITシステムマネジメント部
コーポレートシステム課 課長
鈴木 良史 氏
統合分析基盤の構築に際して、データウェアハウス(DWH)にSAP IQ、周辺システムとのデータ連携用ETLツールにSAP Data Services、データ分析ツールとしてSAP BusinessObjectsを採用。プロジェクトでは、現場のリーダークラスのメンバーにヒアリングを実施してレポートに必要な項目を取捨選択し、最終的に標準データライブラリーとして30本に集約しました。
「JFE システムズにSAP IQ、SAP Data Services、SAP BusinessObjectsで実現できることを分析していただき、現場に対してその回答を確認しながら30本の標準レポートに絞り込んでいく過程が一番の苦労でした。要件を実現するためのアドバイスや、ツール連携によって実現できることの提案など、JFEシステムズの親身なサポートに助けられました」(鈴木氏)
一方で、プロジェクトに参画した現場のキーマン約50名を「BIデザイナー」に任命。標準データライブラリーをカスタマイズできる開発権限を付与し、現場の要望にも対応できるようにしました。
統合マスターは、ERP、SCM、CRM 等、すべてのシステムで個別に管理していた顧客、商品、仕入先等のマスターを整理して統合分析基盤のDWH(SAP IQ)に統合し、ETL のSAP Data Servicesを介して各種システムと連携する形で構築しました。現場では数十万件のマスターデータをチェック、整理、クレンジング再定義しながら、半年がかりで統合マスターの整備を終えました。
「統合マスターの構築では、自由度と汎用性のバランスを考えながら検討する要件定義が難航しました。各システムとデータ連携を実装していく中で、統合マスター外からの要望による仕様変更や修正が発生することも少なくなかったですが、JFEシステムズには粘り強く対応していただきました」(白ヶ澤氏)
ERP、統合分析基盤、統合マスターの導入プロジェクトは2022年5月に次世代システムとして本稼働を開始しました。マルチベンダー体制で進めたプロジェクトは、コロナ禍で本番移行も含めてすべてがリモート対応となっても計画どおり進んだといいます。
「現場を深く理解したJFEシステムズには、必要に応じて要員を増やしていただくなど、全社的なバックアップに助けられました。他社ともスムーズに連携しながら対応いただき、個々のシステム領域でも技術レベルの高いSEを投入、スピーディかつ正確に対応していただいたおかげで、納期どおりに完成度の高いシステムを構築することができました」(廣瀨氏)
システム概要図
需給計画業務の標準化/自動化と需給予測業務の効率化を実現
次世代システムの稼働により、業務の改善と効率化が進んでいます。SCMシステムでは、仕入先ごとに異なっていた需給計画業務の標準化や、需給予測の自動化による業務効率化が実現。属人的な作業がなくなり、人的なミスも削減できました。S&OP統括部 統括部長の福田 純大氏は次のように語ります。
「標準化を進め属人的な業務を削減することで、ライフイベントや人事異動の際のバックアップ体制を構築することができました。需給計画業務の約90%を自動化した結果、1人の担当者が捌ける案件も増え、計画を上回る早さで2020年から2年間で取扱量が2倍近く増えているものの、要員数は変わることなく需給計画業務を回せるようになっています」
需給計画業務を標準化したことで、従来は2週間程度集計に時間を要していた需給予測レポートがリアルタイムとなり、今後の需給推移を事業部問わず複数の軸(アプリケーション/製品カテゴリ/仕入先/顧客)で確認することができ、市場予測との整合性確認・需給予測設定へのフィードバック精度が向上しています。需要予測精度も向上し、現在は全製品の65%以上を誤差10%以内に収められるようになっています。
今後はRapidResponseの豊富な機能を活用し、さまざまな用途に利用範囲を拡大していく予定です。「現在は需給計画や需給予測が中心ですが、価格マスターの統合も進めることでS&OP領域での活用を予定しています」(福田氏)
S&OP統括部
統括部長
福田 純大 氏
レポート管理や業務の標準化が実現多角的な分析が可能に
さらに統合分析基盤によってレポート管理や業務の標準化が実現し、現場ではSAP BusinessObjectsを活用する意識が高まっているといいます。経営企画統括部 経営システム推進室 室長の吉田 吏江氏は次のように語ります。
「ERP、CRM、SCMなど業務システムのデータから統合マスターまですべてのデータが集約されているため、分析軸の項目を増やしたり、角度を変えて見たりと、多角的な分析ができるようになりました。データの取得元が一元化されていることで、分析結果の信頼性も高まり、意思決定の基準も標準化されました」
レポートの作成時間もExcel時代と比べて大幅に短縮。以前は複数のトランザクションからデータを取得して数時間かけてExcelにまとめていたレポートを、現在は30分程度で作成できます。
「SAP BusinessObjectsの中で設定しておけば、前日までの実績レポートは朝出社してから短時間で完成形に仕上げるだけでよくなりました」(吉田氏)
統合マスターに関しても、各システムとの連携先がETLツールに一元化され、IT部門の運用負荷が大幅に軽減。マスターの整備も、顧客の社名変更や合併といった情報が1か所の反映で全システムに対応できるようになりました。
経営企画統括部
経営システム推進室
室長
吉田 吏江 氏
経営情報の可視化が実現しデータを活用した経営判断へ
マクニカは業務プロセスの標準化/業務効率化を実現し、当初の目標で掲げた2025年までに取扱量2倍に耐えうる基盤を構築しました。経営面からみた成果は、経営情報が幅広く可視化されたことだと安藤氏は語ります。
「今後の事業拡大には、事業部間の情報共有や効果的な分析が欠かせません。エンドツーエンドで業務プロセスを網羅し、事業部間を横断して分析ができるようになりました」
統合分析基盤に蓄積したデータは、別途導入したMicrosoft Power BIによってビジュアル化され、ダッシュボードとして経営層やマネジメント層が利用しています。現在、経営会議や部門会議では、PowerPointに変わるツールとしてPower BIの利用を推進しています。
「今後、紙の資料がダッシュボードに置き換わることで、リアルタイムデータを活用した経営判断ができるようになり、意思決定の迅速化につながるものと確信しています」(安藤氏)
継続的に機能を強化しながら海外のグループ会社へ横展開
マクニカは今後も継続的に次世代システムの機能を強化し、運用保守の効率化、業務改善を続けていく方針です。さらにはアジア、欧州、北米、南米に展開する海外のグループ会社への横展開を検討中で、すでにSCMシステムは北米拠点に展開されています。
「次世代システムは、ようやくスタート地点に立った段階で、これからが本番です。統合分析基盤に関しては、現場がBIという新たな武器を身に付けたことで要求レベルも高くなり、AI活用など踏み込んだ提案も必要になっています。JFEシステムズには、引き続き次世代システムを活用した効率化や高度化に貢献していただくことを期待しています」(廣瀨氏)
※ 実績紹介に記載された情報は取材時点のものであり、お客様の社名などが閲覧される時点で変更されている可能性がございますがご了承ください。