三愛石油株式会社(現:三愛オブリ株式会社)三愛石油株式会社(現:三愛オブリ株式会社) 様

取材日:2012年10月

SAP BusinessObjects
導入事例

業種
石油
キーワード
  • ERP
  • BI
  • ETL
  • DWH
三愛石油株式会社(現:三愛オブリ株式会社)

JFEシステムズは人材が豊富。また、業務とシステムの双方に精通しているので、運用しやすい販売システムを構築できました。

エネルギー商社として全国に拠点を構え、様々なエネルギー商品・サービスを取り扱っている三愛石油株式会社(以下、三愛石油)は、SAP BusinessObjectsを導入し、SAP ERPと同社の販売システムとの連携を図っています。その経緯と効果について、同社情報システム部 次長 福井隆義氏、情報システム部 IT管理課長 星川彩子氏、情報システム部 IT管理課 高橋典子氏に詳しくお伺いしました。

三愛石油の業態

- 三愛石油について教えて下さい。

三愛石油は、1952年に航空機給油事業をスタートし、羽田空港の航空燃料給油システムであるハイドラント(消火栓)システムを独自に開発しました。その後、石油、LPガス、化学品へと事業を拡大し、現在、4つのコア事業に加え、天然ガス事業、太陽光発電の普及事業も展開しています。

ガスターミナル写真

2002年の創業50周年を機に、コーポレートブランドとして「Obbli(オブリ)」を導入。「感謝の気持ち」の表れとしてお客様から頂く「ありがとう」という言葉。「Obbli」の語源でもあるその言葉を大切に受け止め、地域社会と共に発展していくために邁進しております。三愛石油グループの事業は多岐にわたり、グループ会社(連結)合わせて30社がそれぞれの分野で活動して、『エネルギーサービスNo.1カンパニー』を目指しています。

貯油タンク写真

SAP BusinessObjectsの活用状況

- SAP BusinessObjectsをどのように活用されていますか。

三愛石油は、2010年に販売システムの再構築を行い、その際に、SAP ERPから販売システムにデータを送るインターフェースとして、SAP BusinessObjectsを導入しました。

三愛石油では、SAP ERPを会計システムとして利用し、財務会計、管理会計、損益管理、買掛金管理などの機能を担わせる一方、ホスト上に販売システムを構築し、仕入や得意先の管理を行っています。そのためSAP ERPと販売システムを連携させる必要があり、その仕組みとしてSAP BusinessObjectsのETL製品Data Integratorを活用しています。

システム概要

販売システムを再構築した理由

- 販売システムを再構築した理由について教えて下さい。

従来はグループ各社が、同じホスト上でそれぞれ個別に販売・会計システムをCOBOL(コボル)で構築し稼動させていました。しかし、昨今の統制強化に伴い、2008年より会計システムをSAP ERPに移行してからは、財務会計、管理会計などはSAP ERPで行い、販売システムは従来のホストで処理を行っていました。会計システムはSAP ERP導入時に「グループ各社で重複したシステム環境」からの脱却ができたのですが、販売システムでは依然複数のシステム環境が存在するため、データ連携プログラムをグループ会社の販売システム毎に動かす必要があり、ホストにかかる負荷が増大していました。また、COBOL資産の増加により維持管理コストも年々増大しており、そのコスト削減も課題となっていました。

そんな中、新たに三愛石油グループに仲間入りした子会社の基幹システムを2012年4月より統合することになり、それを機に、この様な課題に加え、従来からあったSAP ERP周りの「機能の切り分けができていない」「データ活用ができていない」「パフォーマンスが悪化」といった課題もあわせて解決すべく、販売システムを再構築することにしました。

- 機能の切り分けができていないとは。

従来は、SAP ERPと販売システムの機能上の切り分けが一部うまくできていませんでした。
一例として、SAP ERPでは立替金・未収手数料、販売システムでは売掛金・未収手数料というように両システムで債権が発生するため、SAP ERPと販売システムの双方から請求書が合計2通出ていました。現場もお客様も管理が煩雑となり、混乱をまねくこともありました。

また、販売システムからSAP ERPへの債務連携を行っておりましたが、債務管理をする上で、販売システムに入力した仕入情報とSAP ERPで支払処理対象となる買掛金情報の2つを管理しなくてはならなかったため、現場の手間が増えてしまった、ということもありました。

これらの問題の解決策としてSAP ERPの販売モジュールを導入することも検討しましたが、商社固有の要件に柔軟に対応することが難しく、また、運用ルールの変更による現場混乱や構築コストが高くついてしまうことから、導入には二の足を踏んでいました。

福井氏

「DWHをどこに配置するかも含め、JFEシステムズに相談に乗ってもらいました」福井氏

- データ活用ができてなかったとは。

SAP ERPのデータベースはブラックボックスになっているので、簡単に中のデータを見ることも、活用することもできません。データ構造が分からないため、活用したいのにできないという歯痒さがありました。

三愛石油では、日々蓄積されていくデータを、会計だけでなく、販売や帳票システムなどでも活用できるDWH(データウェアハウス)として使っていきたいと考えていました。そのためには、SAP ERPからのデータの抽出機能は必須でしたので、なんとしてもSAP ERPとのインターフェースを作る必要がありました。

- パフォーマンスの悪化とは。

従来は、ABAP(アバップ)を用いたプログラムを使って、SAP ERP内でデータを抽出して中間データベースを作っていましたが、データ量が増えるにつれて中間データベースのパフォーマンスが悪化してきました。パフォーマンス改善の為、抽出プログラムを修正して対応していましたが、なかなか思うように改善できませんでした。

また、ABAPプログラムの作成対象外であったデータ抽出作業にも時間がかかり、担当者に想像以上の作業負荷がかかることがわかりました。具体的には、監査法人に提出する資料の1カ月分を抽出するのに、30分以上かかっていました。しかも、表計算ソフトの制限によって一度には抽出できないので、半月分ごとに抽出する必要がありました。1年分で12時間かかる計算です。作業時には数人で業務分担していましたが、抽出だけでなく照合も含めると、作業は半日では終わりませんでした。

これらの問題を解決するため、再構築に際してデータ統合(ETL)製品を導入することにし、4製品を検討しました。

※ ABAP
独SAP社のソフトウェア製品(SAP ERPなど)と連携して動作するソフトウェアを開発するためのプログラミング言語と開発環境。同社製品を導入する際などに、追加機能を独自に開発したい場合に利用されます。

※ ETL(Extract/Transform/Load)
企業の基幹系システムなどに蓄積されたデータを抽出(extract)し、データウェアハウスなどで利用しやすい形に加工(transform)し、対象となるデータベースに書き出す(load)こと。また、これら一連の処理を支援するソフトウェアを指します。

ETL製品検討の4要件

- どのような条件で、データ統合製品を検討されたのですか。

以下の4つの条件で比較検討しました。

1.SAP ERPデータを抽出しやすいこと
データを活用するために導入する以上、SAP ERPの複数のデータベースから、簡単にデータを抽出できることが必須でした。

2.以前のインターフェースより早いこと
処理速度が低下してしまっては、業務効率が低下してしまいます。そのため、従来のインターフェースよりも処理速度が速い製品にするつもりでした。

3.実績があること
三愛石油では、ホストを中心に各システムを自動運用しています。そのような環境でも実際に動作する実績があることを条件にしました。

4.コストを抑えられること
SAP ERPには様々なデータがあるため、個別に帳票化していてはコストがかかります。テンプレートが豊富に用意されている製品を選ぶことでコストを抑えたいと考えていました。

星川氏

「SAP ERPからスムーズにデータを取り出すKPI Martは魅力的でした」星川氏

JFEシステムズ製DWHテンプレート「KPIMart」

- SAP BusinessObjectsを選択した決め手は何だったでしょうか。

製品を選定するにあたって事前検証を実施しました。検証内容としては次の3点となります。

1.SAP ERPとのデータ連携がきちんとできているのか、数値及び内容を照合確認
2.現行のインターフェースと同等のことができるのかを確認
3.データ抽出の速度の検証

JFEシステムズの提案には、SAP BusinessObjectsと合わせて、SAP ERPのブラックボックスなデータ構造を意識せずにDWH(データウェアハウス)を構築することができる、事前定義済みテンプレート「KPIMart」がありました。ただ、このテンプレートでどこまで現行のインターフェースの仕様をカバーできるか、どの程度のカスタマイズ費用になるかの懸念がありました。

そこで、検証環境に、仕入先マスタ、得意先マスタなど14項目にわたる実運用のデータを入れ、それぞれの項目について1週間程度、チェックしました。その結果、最小限の労力で期待以上の結果が出たので、SAP BusinessObjects及びKPIMartを正式に導入することにしました。

さらに、導入と同時に運用面の改善も行うため、JFEシステムズにはその部分でのコンサルティングもお願いしました。

JFEシステムズのコンサルティング内容

- コンサルティング内容について教えて下さい。

再構築にあたっては、インターフェースの要件を変更したので、その変更点をシステムと運用ルールとに具体的に落とし込む必要がありました。JFEシステムズのコンサルタントには、どうすれば問題なく運用できるのかというユーザー業務の視点と、システムをどのように作り込めばよいのかという システムの視点で課題の洗い出しと整理をお願いしました。

JFEシステムズのコンサルタントは、通常のITコンサルタントと異なり、システムやツールの特性を把握しているだけでなく、現場で行うようなユーザー業務についても理解が深かったので、実際に想定外の結果が生じた場合、システムやツールの問題なのか、運用の問題なのかをスパッと切り分けて指摘してくれました。

例えば、以前は、買掛金の管理はSAP ERPで行っておりましたが、仕入データは販売システムから計上するため、販売システムで仕入明細表を作成していました。明細情報は販売システムで、残高推移はSAP ERPで管理する、というように、データの断片化によって現場のユーザーに混乱が生じることもありました。それがコンサルタントによる課題の洗い出しで明らかになったので、各部門の意見の調整を行い、どのシステムにどの機能を持たせるのかという役割分担を明確にして、運用上、問題が生じないように業務の整理をしてくれました。

SAP BusinessObjectsの導入効果 ~データ抽出作業が1/12

- SAP BusinessObjectsを導入した効果について教えて下さい。

SAP BusinessObjects導入の大きな効果として、以下の4点を挙げることができます。

1.データ抽出の作業効率がアップ
ABAPプログラムを作成せずとも監査の時に公認会計士に提出する書類をスムーズに作ることができるようになりました。今回は、監査時に求められる項目が増え、更に詳細なデータも抽出する必要がありましたが、テーブル構造が理解できていたので、簡単に抽出できました。追加で情報が欲しいといわれても、データが抽出しやすいので、必要データをスムーズに提出できるようになりました。作業量はグッと減り、作業効率は格段にアップしました。以前は1社につき12時間かかっていた抽出作業ですが、今は1時間で完了しています。

2.業務とシステムの一体化を実現
SAP BusinessObjectsを導入することで、SAP ERPと販売システムの両方のデータをシームレスに連係させることができるようになり、請求書は1枚という本来の形に戻すことができました。以前はシステムと業務が途切れた部分がありましたが、今回のシステム再構築でシステムと業務を一体化させることが出来たため、お客様や現場に余計な混乱を生じさせることもなくなりました。

3.データ活用の幅が広がった
SAP BusinessObjectsを利用してDWHが実現できたため、データを有効活用できるようになりました。ユーザーから「このような帳票は作れませんか?」と依頼を受けても、DWHに必要なデータがそろっているため、短時間での対応が可能になりました。

4.データ連携の頻度アップが実現できた
ABAPプログラムよりもデータ連携の速度が向上したため、連携の頻度を高めることができました。これにより、債権管理のタイムラグの短縮を実現できました。

JFEシステムズとSAP BusinessObjectsへの評価

- SAP BusinessObjectsに対する評価をお聞かせ下さい。

SAP BusinessObjectsは、処理速度が速いですね。パフォーマンスがよいので、以前は夜間に更新処理を行っていましたが、現在は夜間の他に12時、16時と業務時間内に2回更新できるようになりました。月末の処理件数が多い時期でも、スムーズに動いています。また、1日3回更新するようになったので、入金が反映するまでのタイムラグが少なくなりました。入金されているのに、翌日にならないと取引限度額が更新されないということもなくなり、ユーザーにも好評です。

SAP ERPから自由に欲しいデータを取り出すことができるようになりました。再構築前は、SAP ERPと販売システムの双方向でのデータ連携は、債権データしか行っておりませんでしたが、SAP BusinessObjectsの機能を利用し、販売システムにも新機能を追加開発したことで、現在は債権・債務とも双方向でのデータ連携が実現できています。

- JFEシステムズへの評価について教えて下さい。

高橋氏

「以前は、監査に必要なデータを落とすだけで半日かかりきりでしたが、今では他の業務をしながら1時間で完了します」高橋氏

JFEシステムズには、システムをコーディネイトする能力があると考えています。特に今回のようなシステム間連係の場合は、システムの仕組み以上に業務内容を理解できていないとうまくいきません。JFEシステムズは、業務内容の細かい点まで把握して、システムと業務の問題を切り分け、最終的にシステムにうまく落とし込んでくれました。システムだけでなく、業務を把握する能力が高い人材が揃っているといえるでしょう。

今後の取り組みとJFEシステムズへの期待

- 今後の取り組みの方向性について教えて下さい。

今回、販売システムを再構築しましたが、まだ、周辺に様々なシステムがあります。現在、SAP BusinessObjectsを利用して、販売システムとSAP ERP間での売掛金・買掛金などの残高チェックを始めていますが、その他にも、販売システム以外のデータ入力系システムとのマスタ連携や整合性チェック等を検討していくつもりです。また、販売システムに外部からファイルをインポートできる機能を追加開発したことで、SAP ERP内の予算データと連携させるなどの業務効率を上げるような活用を目指したいと思います。

- 今後のJFEシステムズへの期待について教えて下さい。

今回、JFEシステムズは、三愛石油の業務内容を深く理解して、販売システムとSAP ERP連携を中心にシステム構築をしてくれました。ただ、販売システムの運用は始まったばかりです。今後、インフラを含めた三愛石油グループ全体の運用に関する支援をしてもらえたらと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。

- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

※ 実績紹介に記載された情報は取材時点のものであり、お客様の社名などが閲覧される時点で変更されている可能性がございますがご了承ください。

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