UiPathによる社内業務の効率化に着手し、各部門の様々な業務効率化に効果を発揮。将来的に全社展開を目指しています
窯業系外壁材をメインとする建材メーカーのニチハ株式会社(以下、ニチハ)は、業務効率の改善のために、RPAプラットフォームUiPath(ユーアイパス)を導入し、システム入力作業の自動化を図られました。
その経緯と効果について、 システム統括部 部長代理 𠮷村一夫氏(写真右端)、同部 部長代理 西原麻衣氏(写真中央右)、同部 柴田康則氏(写真中央左)、同部 佐治香子氏(写真左端)に詳しく伺いました。
ニチハの業態
- ニチハの事業内容について教えて下さい。
ニチハは、1956年に木材資源の有効利用を目的に設立された壁材専業メーカーです。現在は、セメント質と繊維質を混合して製造される窯業系サイディングの外壁材をメインに、内壁材、屋根材、外装部材、外装リフォーム用建材などを製造・販売しています。「環境との共生」や「ロングライフ住宅の実現」をめざし、いち早く石綿を使用しない窯業系サイディングの開発に成功するなど、高付加価値商品を提供し続けており、窯業系サイディングは国内トップシェアです。
従業員数は 2,890名(連結 2019年3月末現在)、売上高は 119,160百万円(連結 2019年3月期)です。

ニチハが製造する
多様なサイディング外壁材
UiPathの活用法
~データ入力作業をロボットで自動化
- UiPathをどのように活用されていますか。
ニチハでは、社内業務に関するデータ入力作業の効率化のために、UiPathを活用してRPA化を推進しています。2019年4月からロボットによる自動化(RPA化)を開始し、現時点では主に販売・購買業務における作業に適用しています。基幹システムへの受発注データやマスターデータの入力作業、定期的なデータ取得作業などを自動化するロボットが稼働しています。
UiPath導入の経緯
- UiPath導入の経緯について教えて下さい。
以前より、社内の各部門から業務の効率化を図りたいとの要望があり、経営層からも新技術を活用して業務を改善できないか検討するようにとの指示がありました。この指示を受けて、Webやセミナー、取引のあるITベンダーからニチハで活用できそうな新技術の情報収集をしていました。その中の一つがRPAでした。
2017年、基幹システムの更改が完了したことを契機に、入力業務効率化の支援ツールとして、具体的にRPAの検討をはじめました。しかし、当時はまだ先行事例が少なく、ニチハで適用できるのか、期待する効果が得られるのか判断がつきませんでした。そこで、まずPoC(Proof of Concept:「概念実証」アイディアの実証を目的とした、開発の前段階における検証)を行うことにしました。

「RPAの導入時には自動化の対象となる業務を社内公募して決めました」 𠮷村氏
RPA製品の選定要件
~汎用性が高く、知見が豊富なベンダーが扱う製品であること
- RPA製品の選定にあたって、どのような条件で比較検討をされましたか。
以下の4つの要件で選定しました。
1.汎用性が高いこと
製品選定時は、どの業務にRPAを適用するかは限定していなかったので、汎用性が高い製品であることは重要です。例えば、適用できるアプリケーションやRPA化できる操作の種類が多いか、といったポイントです。
2.スモールスタートしやすい価格であること
試験導入した結果、ニチハの業務では費用対効果が得られない、という判断になる可能性もあります。そのため、できるだけ初期導入時のコストを抑えられる製品にしたいと考えていました。
3.ロボットの一元管理ができること
RPA化を推進することになると、複数のロボットを稼働させることになります。この時に、運用やメンテナンスの負荷を抑えられるよう、ロボットの一元管理機能があることも必要と考えました。
4.導入後の運用支援が受けられる製品であること
導入後は社内で新規ロボットの開発や既存ロボットのメンテナンスをする想定でしたので、スキルトランスファーやQ&A対応をしてくれる、知見が豊富なITベンダーが扱っている製品であることも重要な条件でした。
これらの条件を踏まえて、カタログベースで絞り込んだ3製品について各ベンダーにデモを見せてもらい、カタログでは分からない点をチェックしました。
- デモではどのような点をチェックされましたか。
実際の画面イメージやレスポンス、ロボットの開発やメンテナンスが行いやすそうかを確認しました。前述のように、ロボットは内製するつもりでしたので、自社内で使いこなせる製品であるか、また費用対効果が見込まれない場合は、導入自体の見直しも必要となるからです。
また、デモの際に、ニチハの基幹システムで使っているパッケージ製品との親和性についても各ITベンダーに確認しました。そのパッケージ製品とRPA製品の相性が悪い場合、ニチハでは基幹システムに関わる業務をRPA化できない可能性が高いためです。他のITベンダーはパッケージ製品との個別検証までは至りませんでしたが、JFEシステムズだけは、そのパッケージ製品の知見があり、RPA化できるかを確認してくれました。
これらを比較検討した結果、最も条件を満たしていたJFEシステムズにUiPathを使ったPoCを依頼することにしました。

「RPAは初めてだったので、効果をチェックするためにPoCからスタートしました」 西原氏
- PoCで検証された項目はどのようなものですか。
大きく分けると2点あります。1点目は、ニチハの業務システムに実際に適用できるのか、ロボットの開発負荷がどれくらいか、RPA化によって業務効率がどれくらい改善されるのか、という一般的な内容です。2点目は、どんな業務が自動化に適しているかの判断基準、効率的に開発や運用していくための方法、といった将来を見据えた知見の獲得です。
対象業務については、自動化したい業務を社内公募し、その中から、以前から要望が高かったマスター登録作業など効果が大きく見込める業務を最初のターゲットとしました。
導入効果
~業務の自動化により作業時間と心理的負担の軽減
- 導入効果について教えて下さい。
定量的な業務負荷の削減に加えて、作業員の心理的な負担の軽減という定性的な効果が出ています。
ニチハが取り扱っている壁材は、消費者の嗜好を反映するため、定期的に新商品の開発や既存製品の改訂を行っています。そのため膨大な量の商品マスターが存在していますが、商品マスターのデータは受発注に関わるデータでもあり、短期間に更新する必要があります。これまでは、残業など人手でカバーしていましたが、RPA化によって、9割以上の時間を削減できています。それだけでなく締切期限に追われていた作業員の心理的な負担も軽減できました。
また、一度の作業量は少なくても日々継続的に行わなければならないものや、多くの社員が行う作業は、1回あたりの削減割合が小さくても月間や会社全体で考えると削減時間は大きくなっています。

「JFEシステムズのサポートのおかげで、ロボットの内製を進めることができました」 佐治氏
さらに、データが自動で正確に基幹システムに登録されるので、後工程での確認作業を軽減できています。自動化済みの業務を合計すると現時点で月間約100時間超を削減でき、更に数倍の作業時間削減を目指し、現在も新たなロボットを開発しています。
他にも副次的な効果として、現場のユーザーが業務効率化の視点を持つようになったことが挙げられます。「この入力作業はRPA化できないか」「この処理手順を変えればRPA化しやすいのでは」という声がユーザーから寄せられることもあります。
- ロボットの開発時に工夫されていることはありますか。
ロボットを開発するだけであれば、そこまで難易度は高くないかもしれませんが、担当者が無意識に行っている例外処理、例えばエラー発生時の対応などがないかをユーザー部門に細かくヒアリングしています。処理をすべてプログラムする必要はありませんが、手戻りがないように要件定義は他システム同様に重要だと実感しています。
また、処理の共通化も意識しています。よく使われる処理を共通のモジュールにしておけば、新たにロボットを開発する際にそれらを組み合わせることで効率も上がり、メンテナンスも負荷を下げられると考えています。
JFEシステムズのサポート
~UiPathと他のシステムとの連携についての知見が豊富
- ニチハで利用されているシステムとUiPathとの連携はいかがでしたか。
前述の通り、基幹システムとUiPathとの検証を行う際、JFEシステムズが持つ知見をレクチャーしてくれたので大きな問題もなく開発することができました。
- JFEシステムズのサポートはいかがでしたか。
経験が豊富なJFEシステムズの担当者が、丁寧にサポートしてくれました。7~8回、1回につき半日かけて、基本的なことからノウハウなどを教えてもらいました。RPAは初めて扱うため、普段のシステム設計とは違って勘所がつかめず分からないことも多かったのですが、寄り道せずに習得することができました。
また、ロボットを属人化すると動かないロボットやメンテナンスされない、いわゆる野良ロボットが生まれやすくなります。野良ロボットを防ぐために、開発だけでなく、その後の運用を見据えたアドバイスもしてくれました。ニチハではシステム統括部がロボットの環境を管理して開発と運用を行い、ユーザーはロボットの実行、ロボットへの改善要望やRPA化の候補業務のリクエスト、と役割を分担しています。

「導入前にJFEシステムズから運用を見据えたアドバイスをしてもらえたので助かりました」 柴田氏
今後の取り組みの予定とJFEシステムズに対する期待
- 今後の取り組みのご予定をお聞かせ下さい。
各部門それぞれに存在する自動化・効率化の余地がある業務について、RPAを含め適切なツールを用いた業務効率化を推進したいと考えています。ニチハにとって、RPAはそのきっかけを投じたツールであると捉えています。今後も投資対効果を見極めながらUiPathを活用して対象となる業務やシステムの範囲を広げていく予定です。
- 今後のJFEシステムズに対する期待について教えて下さい。
UiPathでのRPA化でうまくいかない際に、対応策について相談させていただくことはもちろんですが、メーカーから提供される情報に加え、JFEシステムズが他社事例などから得た知見も提供していただきたいと考えています。また、業務効率化の観点としてはRPA化だけで解決できる範囲は限界があるので、ニチハとしてその他の新技術も検証していきます。その際に、経験や知見を活かして、色々と支援していただきたく、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
- お忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。
※ 実績紹介に記載された情報は取材時点のものであり、お客様の社名などが閲覧される時点で変更されている可能性がございますがご了承ください。