設備工事に特化したシステムテンプレートを組み合わせ、鉄道施設の工事・購買・在庫を一気通貫に管理するシステムをわずか10カ月で稼働開始
名古屋鉄道株式会社について
愛知・岐阜エリアで交通事業などを展開する名古屋鉄道株式会社は、JFEシステムズのSAPプロジェクト管理テンプレート「SIDEROS PS TEMPLATE for SAP S/4HANA」とWeb購買システム「Enterprise Commerce 設備工事テンプレート」を組み合わせ、工事・購買在庫管理業務の効率化を実現しました。複数のテンプレートを有効活用することで、10カ月という短期間で稼働開始。従来の紙ベースの業務が電子化され、ペーパーレス化・調達リードタイムの短縮・業務負荷の軽減などにつながっています。
会社情報
創業/設立
1894年6月25日/1921年6月13日
資本金
1,011億5,800万円(2022年3月末現在)
本社所在地
愛知県名古屋市
Webサイト
事業内容
鉄軌道事業、不動産事業
導入ポイント
- ・SAP S/4HANAとEDIテンプレートを活用した短期構築
- ・財務会計、予算、社内稟議などの外部システムともシームレスに連携
- ・社内各部門(工事・購買・財務)のみならず、取引先を含めた一気通貫な業務の確立、標準化
システム統合による工事管理と資材購買在庫管理の効率化
「ココロをつなぐ、あしたへはこぶ。」をコミュニケーションスローガンに、中部圏の交通網を支える名古屋鉄道。愛知と岐阜の両県下に444.2kmの路線網と275駅を擁し、年間約3億人の輸送を担っています。不動産事業においても名古屋ならではのまちづくりを推進し、沿線の活性化などに取り組んでいます。
同社は2018年度からの中期経営計画において、主要施策の1つに業務プロセス改革を掲げており、その中で工事管理と購買在庫管理の効率化に着目しました。
従来、これらの業務には各部門個別のシステムやエクセルを利用していましたが、部門間のみならず、取引先との連携も含めた業務効率化に向け、システムの統合に乗り出したと、名古屋鉄道 総務部 課長補佐の山口孝治氏は語ります。
総務部 課長補佐
山口 孝治 氏
「この業務は、工事部門・購買部門・財務部門・取引先様と関係者が多い一方で、“情報連携” イコール “転記作業”となっていました。また、外注工事ではレールなどの鉄道業界特有の部材は自社調達で施工会社様に支給しますし、日常の線路補修・部品交換などは自社の保守部門が直接行っていますので、工事部門と購買部門の連携が欠かせません。財務会計についても、国が定める鉄道事業専用の会計規則があり、資産を詳細に区分しなければならないので、工事部門と財務部門の綿密なコミュニケーションが必要です。今回はこれらの連携に加え、取引先様との情報・金・モノの流れもシステム化することで、ばらばらだった見積・発注・竣工(検収)・請求フローを一元化し、一気通貫な情報連携の実現を目指しました」
SAP S/4HANAの業務テンプレートとWeb購買システムで短期稼働を実現
工事・購買在庫管理のシステム統合を目指した同社は、まず新たな業務フローを整理。そのうえでERPパッケージの導入を前提にRFP(提案依頼書)を複数のベンダーに送付しました。数社の最終候補の中から、SAP S/4HANAの業務テンプレート「SIDEROS PS TEMPLATE for SAP S/4HANA」、Web購買システム「Enterprise Commerce」、PaaS型クラウドサービス「SAP HANA Enterprise Cloud」を提案したJFEシステムズを採用。その理由を、同社デジタル推進部 グループDX担当課長の壁谷知宏氏は次のように語ります。
「JFEシステムズ以外の提案では、EDIを別会社に発注する必要があったので、プロジェクト規模の拡大や長期化、コスト増が懸念されました。JFEシステムズは、SAP・EDIの両方のパッケージを組み合わせた提案でしたので、ワンストップかつ短期間で構築できると考えました。また、提案前から当社としっかりとコミュニケーションを図り、業務要件を深く理解してもらえていたので、プレゼン内容も当社の事情を踏まえたわかりやすいものでした。当社のシステムは、これまではスクラッチ開発が中心で、今回ほど大規模なパッケージ導入経験はほぼ初めてでした。また、SAPとEDIを会計や稟議などの複数の社内システムと連携させる複雑な案件でしたが、JFEシステムズなら安心して任せることができると判断しました」
デジタル推進部
グループDX担当課長
壁谷 知宏 氏
導入プロジェクトは2020年9月開始、2021年7月に工事管理領域が稼働。同年10月には購買在庫管理も含め全面稼働しました。プロジェクト体制は、名古屋鉄道、IT子会社のメイテツコム、コンサルティング会社、JFEシステムズの4社で構成され、名古屋鉄道からは総務部、デジタル推進部、財務部、業務部門(購買部門、鉄道事業・不動産事業の工事部門)より20名以上のメンバーが参加し、エンドユーザーは約300名を想定。そのため連携先も多く、業務要件の整理が難しかったといいます。
「パッケージのFIT&GAPもほぼ初めての経験で、関係者の意見を整理しながら要件を満たしていくことに苦労しました。業務側からの機能追加要望も複数ありましたが、重要度・開発工数(予算)・スケジュールとのバランスを精査したうえでアドオン判定会議を開催し、関係者間で合意形成しました。機能追加の要否判断が難しかったですが、JFEシステムズの協力でスムーズに進められました」(山口氏)
データ移行では、大量のマスタ整備も発生。「部門ごとに購買業務を行っていたので、それぞれに品目マスタがあり、件数(レコード数)は4万件にものぼりました。データ移行にあたっては、これらを整理しながら複数回のリハーサルを経て、最終的にはトランザクションデータも含めてすべて無事に移行することができました」と、同社鉄道事業本部 計画部資材課長の森正樹氏は振り返ります。
コロナ禍という今までにない社会状況のなかでのプロジェクトとなったものの、信頼関係を構築し、リモートを活用して効率的に開発できたといいます。
「定例会議は基本リモートで行い、重要な局面はオンサイトで議論するなど、2つをうまく組み合わせたことで効率よく開発が進み、短期稼働につながりました。JFEシステムズのコンサルタントとはプロジェクトを通して強い信頼関係を築き、問題が起きたときも腹を割って議論できました。鉄道固有の業務や実情を踏まえて、柔軟に対応していただけたと感じています」(壁谷氏)
総取引数の9割以上を電子化シームレスな情報連携を実現
工事・購買在庫管理システムの刷新により、社内各部門および200社を超える取引先とのシームレスな情報連携が実現、業務の品質とスピードは劇的に向上しました。
「購買業務では、取引先様との総取引数の9割以上を電子化しました。これにより、見積・注文等のペーパーレス化が進み、月に数百件以上の印刷・郵送コストと作業工数が削減されただけでなく、シームレスな情報連携により、調達までのリードタイムを短縮できました。請求の電子化により、経理処理も効率化しています」(森氏)
また、システム統合に伴い、各部門で行っていた購買業務を森氏の所属する計画部資材課に集約。これにより同課の発注数は導入前より1.5倍以上に増加しましたが、要員を増やすことなく対応できています。システム自体も稼働直後から安定し、山口氏は「ユーザーからの問い合わせも徐々に少なくなってきており、想像以上に安定した運用ができています」と語ります。
鉄道事業本部
計画部資材課長
森 正樹 氏
SAP S/4HANAをデータ基盤として経営に資する情報提供へ
今後、名古屋鉄道はJFEシステムズの運用保守業務支援を活用し、継続的な機能改善を続けていく一方で、マニュアルの整備や教育などを通して業務ユーザーの習熟度を高め、さらなる効率化を図っていきます。
「ユーザーからも要望を聞き、より使いやすく、効率化につながるシステムへとさらに発展させていくにはJFEシステムズの支援は欠かせず、鉄道事業特有の業務ニーズを理解したうえでの情報提供や提案に期待しています。さらには、SAPをデータ分析基盤として活用し、ロジスティクスKPIや財務KPIなどのデータを可視化することで経営に資する情報を社内発信していきます」(壁谷氏)
継続的な進化を遂げる名古屋鉄道のシステムは、経営課題へのスピーディな対応に欠かせない存在として、今後も重要な役割を担っていきます。
- お忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。
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