商品開発の本業の邪魔になるExcel事務、そして転記。これをMerQuriusで一掃しました
赤城乳業 開発本部 商品開発部 課長補佐 中川彰洋 氏、財務本部 情報システム部 部長 吉橋高行 氏、課長 髙橋一仁 氏にMerQuriusを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。
赤城乳業について
- 赤城乳業について教えて下さい。
赤城乳業は、「ガリガリ君」を主力商品とするアイスクリーム専業メーカーです。 「ガリガリ君」は、発売33年目の2014年には販売本数が5億本(日本の人口の4倍)を超えた、驚異のロングセラー&ベストセラー商品です。その他、「ガツンとみかん」、「赤城しぐれ」も2018年には過去最高の売上げを記録するなど、少子高齢化、人口減少という逆風を全く感じさせない急成長を継続しています。年商453億円、社員数384名、設立1961年(昭和36年)
※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
商品開発と商品情報管理の基幹システムとしてMerQuriusを活用
- 赤城乳業ではMerQuriusをどう活用していますか。
赤城乳業では、MerQuriusソリューションを商品開発および商品情報管理の基幹システムとして活用しています。概要は次のとおりです。
導入システム | 内容 | 導入の主目的 |
---|---|---|
Mercrius | 商品情報データベース |
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Quebel | 商品試作支援システム |
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MerQurius Net | 原料仕入データベース |
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【MerQurius Net、Quebel、Mercriusの相互関係】
今回のMerQurius導入は、会社全体を根底からIT化、効率化するという「赤城ITグランドデザイン」の一環です。MerQuriusはSAP ERPと並ぶ、赤城乳業の2大基幹システムです。
なお、本日は、MerQuriusの導入効果を「商品開発の視点」からお話しすることにいたします。
【『赤城ITグランドデザイン』の全体図(SAPとMerQuriusが基幹システム)】
新商品を「2日に1点」のペースで投入
- 赤城乳業ではどのぐらいのスピードで商品開発をしていますか。
会社全体で、年間約180の新商品を投入しています(※)。つまり「2日に1回」のペースで商品投入していることになります。
ガリガリ君に限るならば、地方限定版、期間限定版を含め、年間、約30商品を投入しています。「1ヶ月に2~3商品」というペースです。
※プライベートブランド(OEM)商品を含む
商品化される180点の背後には、多くの試作品(ボツ)があります。そして試作にも至らない「アイディアレベル」「思いつきレベル」となると、年間5000は下りません。開発部門に配属された新入社員には「アイディア1000本ノック」という表現で社員の遊び心をくすぐりながらも1日3つ、1年で1000個の商品アイディアを自由に楽しく発想し提案してもらっています。
商品の「アイディア」は、開発部門に限らず、生産、営業、人事、経理など会社の全部門、ときには社員の家族、そしてお客様をも巻き込む形で年代・性別・国籍問わずに、ありとあらゆるチャネルを使って全方位から集めています。これら商品アイディアは、赤城乳業の生命線です。
以前はExcelが基幹システム?
- MerQurius導入前にはどのように業務を進めていたのですか。
以前はExcelとファイルサーバが開発部門の基幹システムでした(笑)。配合表など各種書類はExcelでイチから手作り。システムには手作業で転記。経験と人によるチェック体制と、最後は気合いでノーミス運用する、という状態でした。
この運用により次のような課題が生じていました。
1.「開発の仕事なのに、事務作業の負担が高すぎる」
2.「Excelは属人性が高すぎる」
3.「試行錯誤が気楽にやりにくい」
4.「ミスの温床、『転記』が多すぎる」
5.「事務作業をこなして、仕事をした気分になってしまう」
事務作業が多すぎる
- 課題1.「開発の仕事なのに、事務作業の負担が高すぎる」とは具体的には?
商品開発に必要な事務作業は大きく次のとおりです。
1.「試作配合作成」
2.「栄養成分作成」
3.「表示作成」
4.「規格書作成」
5.「配合表作成」
6.「仕込み手順書作成」
一つの商品を開発するにあたり、試作は何度も何度も納得するまで繰り返します。これは「1.試作配合作成」と「2.栄養成分作成」の作業を、試作の回数だけやりなおすことを意味します。これをExcelの「手書き」「手作り」でこなすのは非常に作業負荷が高い。また、そうして増え続けるExcelファイルを保管、分類する付帯業務も増えていくわけです。商品開発に集中したいのに、かなりの時間を事務作業に割かざるを得ない。なんとかして商品開発に集中できる環境を作るべきだと課題認識しながらも、なかなか脱却できない状況が続いていました。
属人性が高すぎる
- 課題2.「Excelは属人性が高すぎる」とは。
Excelは自由度が高いのは便利ですが、その分、経験、資質、習熟度により作業品質やスピードが違います。「Excel名人とそうでない人の差が大きい」ということです。
Excel上で行っているのは結局のところ、「事務作業」です。そこに個性や特色は必要ありません。「人それぞれ」ではなく、「みんな同じ(一元化)」の方が望ましい。この属人性の問題をシステム導入を通じて解決したいと考えました。
試行錯誤がやりにくい
- 課題3.「試行錯誤が気楽に行いにくい」とは。
<工夫するたびに事務作業が増える>
商品開発のときは、「この味じゃない」「、材料を変えたらどうなる?」、「もう少し何かを足して」など、いろいろ試行錯誤したいものです。しかし従来のExcelでは、配合全体の整合性を保ちながら変更を加えるのは、きわめて神経を使う作業でした。つまり、新しいことをするたび事務作業の負担も増えるわけで、最悪の場合、新しいことをするのが「おっくうに」になります。これは開発業務にとっては大きなマイナスです。
<アイスクリームとアイスミルクとラクトアイスと、氷菓>
アイスクリームは乳固形分と乳脂肪分の含有量により、表示が「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」に分かれます。こういう「細かいけど重要なこと」は手計算で確認するのではなく、システムで表示を自動計算してくれる方が助かります。
<中間品と完成品を同時進行したい>
ガリガリ君は基本的に、シャキシャキの氷菓部分を、別の材料でコーティングするような作りになっています。また今年発売した「ガツン、と グレフル×みかん」は、上半分がミカン味。下半分がグレープフルーツ味(どちらも果肉入り)という、2つのアイスを一つに合体させた商品でした。こういう商品を開発するとき、「中身と外側」「上半分と下半分」をそれぞれ「中間品」として別個に開発していきます。しかし最終的な栄養成分は2つを合わせた全体数値で表示するわけで、そういう「合成計算」のような作業はシステム化、自動化したいところでした。
転記業務が多すぎる
- 課題4.「ミスの温床、『転記』が多すぎる」とは。
以前のExcel時代は、何をするにも、転記に次ぐ転記、でした。たとえば、一つの配合表を、生産系と受発注系の2システムに、個別に手入力する必要さえあったのです。ここで入力ミスがあると後々、悲惨なことになります。だからそうならないよう、担当者は集中して注意深く転記します。そしてミス防止のために複数人(時には5名も!)で事後確認します。しかし、この努力に何か意味があるのでしょうか。
実はありません。データは一元管理、自動転送するべきです。そこは人間が頑張るところではない。転記はぜひ撲滅したいところでした。
それで仕事をした気になってしまう
- 課題5.「事務作業をして、仕事をした気分になってしまう」とは。
Excelの事務作業は非常に面倒です。しかし、時には「よし、何が何でも正確に仕上げてやるぜ」とやる気スイッチが入り、一気に集中して「ノーミスの配合表」が作れることがあります。その過程でExcelの使い方も上達し、また一歩「Excel名人」に近づき、ああ、今日は良い仕事したなと充実感に包まれるわけです。
しかし、ここでふと我に返る、いいのか、オレ?と。開発部門の本業は、すごいガリガリ君を考えることであり、Excelを正確に仕上げることではありません。そこに充実感を感じてはいけないのです。
この「事務作業をして、何か仕事をした気分になってしまう」というのは、開発部門にとって、潜在的に大きな課題でした。
開発本部 商品開発部 課長補佐 中川彰洋 氏
これらもろもろの問題を解決するべく、商品情報データベースと試作品開発支援システムを導入することを決定しました。その後、候補となる数製品をリストアップした上、比較検討しました。
新システムに求めた要件
- 新たに導入するシステムを比較検討した際の基準を教えてください。
単純には、「今ある課題を、【根本的に】解決できるシステム」を求めました。表面的なきれい事の効率化ではなく、食品業界の業務形態に合った「本当の効率化」が可能なシステムを求めました。
システム化の全体コンセプトは次のとおりです。
「商品開発業務を網羅した上で、特殊性もカバー」
「情報の一元管理により商品登録書作成がスムーズ」
「複数部署にわたる横断業務が効率的に行える」
「食に関する情報がタイムリーに提供される」
「将来的な業務変化への対応が比較的スピーディー」
「システム間の連携が容易」
財務本部 情報システム部 課長 髙橋一仁 氏
こうした基準、観点で各種システムを比較検討しましたが、やはりMerQuriusが最良でした。2012年に導入決定、その後、設計、導入、カスタマイズの期間を経て、2014年1月より稼働開始しました。
導入後の効果
- MerQurius導入後の効果を教えてください。
まず開発部門の作業時間は、MerQurius導入前の240分から導入後は95分に低減。従来比60%の時間退縮を実現しました。転記もほぼ「ゼロ化」できました。その他、従来、会社を苦しめてきた事務作業の負担は、MerQuriusの導入により、ほぼ解消することができました。
【各開発工程における作業時間の比較】
Excelは追放できたのか?
- 従来、Excelで行っていた仕事はすべてMerQuriusで代替できたのですか。
いえ、代替(継承)できたのは7割だけです。では、残りの3割はどうしたのかというと、うち2割については、「MerQuriusの機能で処理できるよう、こちらの仕事のやり方を変える」ことで対処しました。やってみれば案外できるものです。残りの1割については、「試しに止めてみたら、実はやらなくていいことが分かった」ので、作業そのものを止めました。 MerQuriusの導入により、仕事のやり方を見直すことができた、これももう一つの導入効果です。
なお、MerQuriusの操作画面については、「極力、従来のExcelと同じような画面にする」よう、JFEシステムズにカスタマイズしていただきました。おかげで新システムの操作習熟に、さほど時間はかかりませんでした。
使ってみて初めて分かった良い点
- その他、実際に使ってみて分かった「MerQuriusの良さ」のようなものがあればお聞かせください。
まず「情報が一元化されているのは、やっぱりいいものだな」と実感しています。たとえば以前は、それが「いちご」なのか「ストロベリー」なのか、言葉がまちまちでした。しかし、MerQurius導入後は、データベースに登録されている用語により、言葉が一元化されました。細かい話ですが、最後に「法令に基づく表示」を作る以上、用語は統一しなければならない。最後に直せばいいでしょ、ではなくて、最初から同じにするべきです。その方が、妙にイラッとすることなく、スッキリした気分で仕事ができます。
次に「ノウフー(KnowWho)が大充実」というのも予想外の効果でした。MerQuriusがExcelと最も違うのは、誰がいつ何を直したか、その更新履歴が「全部」残ることです。何かの原因究明が必要なときは、変更履歴をたどれば、どの変更が問題の原因なのか特定できます。そして次はその変更を加えたのは「誰なのか」を見ればよい。そこまで分かったら、後はその人に話を聞きにいけばいい。一番、情報を持っているのは変更した当人であるわけで、その人に話を聞くのが一番早いわけです。 Excelでは「最終結果」しか分かりませんが、MerQuriusだと「途中経過」そして「変更したのは誰なのか」が分かります。仕事効率は大幅に向上しました。
先行ユーザーとしてのアドバイス
- いま、開発業務のシステム化を検討している食品会社に向けて、先行ユーザーとしてのアドバイスなどあればお聞かせください。
平凡な言い方ですが、「食品業界特化のシステム」「実績が多いシステム」はやはり良いです。実績が多いと言うことは、それだけ多くのユーザーが支持しており、またそれらユーザーの要望がバージョンアップを通じてシステムに良く反映されているからです。目先の華やかさはさておき、やはり「専門と実績」に着目するのが良いと思います。
今後の期待
- JFEシステムズへの今後の期待をお聞かせください。
赤城乳業はこれからもお客様を驚かせる、新しいガリガリ君、新しいアイスクリームを次々、考え出していきます。JFEシステムズにはそんな弊社の研究開発の取り組みを、優れた製品、システム、サポートを通じて、後方支援していただくことを希望します。引き続きよろしくお願いします。
財務本部 情報システム部 部長 吉橋高行 氏
- お忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。
※ 実績紹介に記載された情報は取材時点のものであり、お客様の社名などが閲覧される時点で変更されている可能性がございますがご了承ください。