ヤマシンフィルタ株式会社ヤマシンフィルタ株式会社 様

取材日:2018年08月

SAP ERPソリューション
導入事例

業種
機械
キーワード
  • ERP
ヤマシンフィルタ株式会社

ヤマシンフィルタでは、世界6拠点のデータを一元管理し、収益管理を強化するためSAP ERPを導入しました。
年3~4億円原価を低減できると想定しています。

ヤマシンフィルタ株式会社(以下、ヤマシンフィルタ)は、油圧フィルタを中心に産業用フィルタ、プロセス用フィルタを開発、製造、販売するメーカーです。同社は事業をグローバルで展開しており、建設機械用油圧フィルタの分野では、世界シェアの7割を占めています。ヤマシンフィルタでは、世界各地の拠点の基幹システムをSAP ERPで統一し、経営分析に役立てています。SAP ERPを導入するまでの課題とSAP ERPを選定した理由、グローバルでの導入の際に工夫したことなどを、同社 取締役 管理本部長 井岡周久氏(写真右)、管理本部 情報システム部 情報システム課 課長 鴫原浩修氏(写真左)に伺いました。

ヤマシンフィルタの業態

- ヤマシンフィルタの事業内容について教えて下さい。

1956年の創業以来、建設機械用油圧フィルタを開発、製造、販売しています。建設機械用油圧フィルタは、建設現場で穴を掘るショベルカーや重量物を運ぶホイールローダーなどの油圧システムに用いられています。

作業現場は土砂や埃まみれの環境で、それらは油圧システム故障の原因となるため、不純物や油の汚れをろ過するのが当社のフィルタです。現在、日本、フィリピン、タイ、アメリカ、ベルギーに拠点を設け、グローバルな開発、生産、供給ネットワークを構築しており、当社の製品の世界シェアは70%となっています。

油圧フィルタ

また、60年にわたって培ってきたフィルタに関するノウハウを活かして、産業用フィルタ、プロセス用フィルタ分野にも事業を拡大しており、現在、従来の素材に比べ1,000分の1の細さのフィルタの量産化を目指しています。これに成功すれば、ナノファイバー技術により、音、熱、光等を低減、増幅することができるようになり、従来の不純物をとるというフィルタの概念が根底から覆ることになります。

収益の見える化を進めるためにSAP ERPを活用

- SAP ERPはどのように活用されていますか。

従来の基幹システムをリプレースする形でSAP ERPを導入しました。日本、フィリピン、アメリカでは2017年10月から、タイ、ベルギーでは2018年1月から本稼働しています。現在、SAP ERPを活用して、世界各国にある拠点の販売、生産、購買、財務会計、管理会計のデータを一元管理し、経営分析に役立てています。また、経営分析には指標となるデータが必要ですが、その収集のためにKPIMartを活用しています。

SAP ERP導入の理由

- 基幹システムのリプレースを検討するに至った理由を教えてください。

従来の基幹システムでは総合原価計算しかできないため各商品の収益性を把握できず、経営分析のための基礎情報がありませんでした。また、海外拠点の基幹システムは本社とは別のシステムで連携できていなかったため、連結決算の対象となっている海外拠点の月次決算用データはエクセルで送られてきましたが、データの整合性が取れておらず、四半期決算時には経理部門は徹夜の作業を強いられていました。さらに、システム連携ができていないことから、受発注は紙ベースで行い、紙を見ながら各拠点のシステムに手入力している状態でした。

これらの課題解決と今後の事業拡大を見据え、東京証券取引所第一部に上場したタイミングで、統一的な基幹システムを構築することにし、5製品を比較検討しました。

井岡周久氏

「データの見える化が実現でき、経営判断がスピーディーに行えるようになっただけでなく、現場も考えて行動するようになりました」井岡周久氏

製品選定の要件~経営分析に使えるデータが揃えられること

- どのような条件で比較検討されたのでしょうか。

以下の4条件で検討しています。

1.必要な原価管理機能が揃っており、使い勝手がいいこと

経営分析に使うために、総合原価計算だけでなく、個別原価計算、標準原価計算、直接原価計算ができる製品で、使い勝手がよいものを選びたいと思っていました。

2.販売、生産、購買、会計を一元管理できること

工場、販売拠点と本社を結び、仕掛品や完成品の在庫、受発注の状況など全体の状況をリアルタイムで把握できることが必須条件でした。

3.グローバル対応

海外拠点があることからグローバル対応できる製品を希望していました。

4.将来の拡張性があること

今後の事業展開を考えるとM&Aも増えてくることが予想できたため、異なるシステムからの移行がしやすく、移行実績の多い製品にするつもりでした。

これらの条件で検討した結果、SAP ERPを導入することに決めました。

- 安いパッケージ製品を導入するほうが良いのではといったお話しがあったと伺いましたが、そうされなかった理由を教えてください。

安い国産パッケージ製品を導入してはどうかという話は経営幹部でも議論しました。ただし、拡張性、導入実績、将来に渡って安定した運用ができることを考えSAP ERPの導入を決定しました。特に、ターゲットとしている原価管理機能が充実していること、グローバル企業として特別な対応をせずとも標準機能で対応できることを評価しました。さらに、JFEシステムズのグローバル&グループ企業向け経営管理システム『KPIMart』により、経営の見える化を早期に実現できることが、決め手となりました。

チーム力を評価し、JFEシステムズをベンダーとして選んだ

- SAP ERPを扱うベンダーは複数ありますが、JFEシステムズから導入された理由は何ですか。

SAP社から複数のベンダーを紹介してもらいましたが、ベンダーには、SAP ERPに関する実績や知見、信頼性が高いこと、突発的なことが起きたときに対応してもらえる組織性を持っていることを求めていました。

その点、JFEシステムズは、問い合わせに対して的確な回答をしてくれました。他のベンダーのように、できること、できないことが根拠なく変わることはなく、分からないことは分からないと言った上できちんと調べて返答があり、信頼できると判断しました。また、営業担当者と技術担当者がチームを組んで対応してくれ、例外的な事態が発生しても安心して任せられそうでした。

さらに、JFEシステムズは、SAP ERPのデータ分析に必要なデータ抽出ツールであるKPIMartの提供もしていました。KPIMartを導入すれば、ヤマシンフィルタが希望するデータ分析基盤を短期間で構築することが可能でした。JFEシステムズにはKPIMartを利用した構築実績もあり、その点も評価し、JFEシステムズから導入することにしました。

鴫原浩修氏

「データの見える化が実現でき、経営判断がスピーディーに行えるようになっただけでなく、現場も考えて行動するようになりました」鴫原浩修氏

グローバル導入で工夫したこと

- 導入、稼働を2段階に分けられた理由を教えてください。

マンパワーが限られている状況下で、スムーズに導入するためです。第1フェーズで運用上の問題点を洗い出して、第2フェーズに同じ問題が発生しないようにしました。また各フェーズとも、稼働時に本社の情報システム課の担当者が各拠点に赴いて2週間ほど滞在しながらサポートするとともに、担当者間で問題点の情報共有をしました。その結果、何度も同じトラブルが発生することはなく、稼働して3カ月後には、現地からの問い合わせもほとんどなくなりました。

- グローバルでの導入にあたり、文化、風習等の違いで苦労されたことはありますか。

文化、風習の違いが出てくるのは物事の捉え方においてですので、導入時のサポートにあたっては用いる単語や教え方を日本のそれとは変えました。今回のSAP ERPの導入について、なぜ必要なのか、導入すればどのようなメリットが会社や従業員にあるのかを丁寧に説明するなど密なコミュニケーションをとり本社主導で進めたため、導入はスムーズに進んだと思います。

導入効果~見える化が進み、収益基盤が強化できた

- 導入効果はいかがですか。

SAP ERPを導入して、以下の効果が出ています。

1.経営情報の見える化基盤ができあがった

拠点の情報を一元管理できるようになったことで、事業別、製品別の収益状況がリアルタイムで把握でき、これまでできなかった経営分析もできるようになりました。また、拠点でもデータを見ることができるので、現場でも何をどうすればよいのか考えるようになり、業務改善意識が高まりました。

2.業務の効率化が進んだ

データの正確性が担保されるようになったため、経理担当者の残業がなくなり、定時帰宅できるようになりました。決算時には監査法人の担当者に来てもらっていますが、彼らも定時に帰宅できるので、そのコストも削減できました。

3.収益基盤が構築できた

原価管理強化が進み、収益基盤を強化できました。現時点では、完全には活用しきれていないため原価差異を分析するには至っていませんが、これができるようになれば、年に3~4億円程度、原価を低減できると考えています。

4.M&Aによる新事業体にも使える

これは実現しているわけではないので厳密には効果ではありませんが、M&Aで合併した際にも使うつもりです。今回の導入の経験があるので、スムーズに導入できるだろうと考えています。

JFEシステムズの対応~要望を的確に吸いあげ対応してくれた

- 導入時のJFEシステムズの対応はいかがでしたか。

JFEシステムズの担当者は、ヤマシンフィルタの要望を的確に吸い上げてシステムに反映させてくれました。途中からフィリピンのBIR審査が厳格化されてしまい、予定より時間がかかってしまいましたが、他の拠点の構築を前倒しで対応してくれ、結果として予定より早く本稼働することができました。

また、本番稼働前のテスト時や切り替え時には、各拠点に出向いてサポートしてもらうことができたので、円滑にリリースすることができました。今回、SAP ERPをスムーズに導入できたのはJFEシステムズのサポートがあったからこそで、大変感謝しています。

今後の予定とJFEシステムズに対する期待

- 今後のお取り組みのご予定を教えてください。

SAP ERPを有効に活用することができるように、教育活動をさらに行う予定です。また、テスト的に国内工場のスマートファクトリー化を行うことを計画しています。スマートファクトリー化によって、品質や工場の状態について見える化でき、経営分析につなげられるようであれば、グローバル展開していきたいと考えています。

- JFEシステムズに対する今後の期待について教えてください。

現在の事業はフィルタという単一のセグメントですが、新素材の製品化が実現すると複数セグメントになります。そうなるとこれまで以上に、素早い経営判断が求められ、それを支えるSAP ERPとKPIMartの役割はさらに重要度を増してきます。JFEシステムズには、これまで通りヤマシンフィルタに寄り添ってサポートしてもらいたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

※ 実績紹介に記載された情報は取材時点のものであり、お客様の社名などが閲覧される時点で変更されている可能性がございますがご了承ください。

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