スペシャルインタビュー

KPMGコンサルティングとJFEシステムズでROIC経営の最新事情について語り尽くす!【第1回】

第1回 ROIC導入の意義

――最近、資本コストや投下資本効率を意識した経営が注目されていますが、これまでの日本企業における経営管理指標にはどういったものがあったのでしょうか?

衣笠氏:
日本企業における経営管理は、高度経済成長期は売上至上主義でひたすら規模拡大を目指していましたが、「市場環境」と「投資家等の期待・関係性」の変化から1990年代のバブル崩壊以降は利益重視、2000年代はキャッシュフロー経営で、2010年代に入り資本コストへの意識が強まりROEやROICなど投下資本効率の指標が重視されるようになってきている、というのがこれまでの日本企業における経営管理指標の変遷になります。

衣笠氏

――そのような過去の歴史がある中で、昨今、資本コストや投下資本効率を意識した経営が注目されているのはどういった理由からでしょうか?

衣笠氏:
投資家サイドから経営者に向けて投下資本効率向上に対する指針が提示されており、この影響もあってROEなど投資効率の実績や目標を開示する企業が増えてきています。

2014年8月に公表されたいわゆる伊藤レポートでは、持続的成長には企業と株主の協創が必要であり、そのためには中長期的目線でROE8%を目指すべきと結論付けられていますし、企業のガバナンスに関する解釈指針を規定したコーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」)も2015年6月に公表されました。

吉田

このCGコードの公表後、金融庁によりコーポレート・ガバナンス改革をより実効的なものへ深化させるために継続議論がなされ、2018年6月に「投資家と企業の対話ガイドライン」が公表され、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた機関投資家と企業の対話において重点的に議論することが期待される事項として、資本コストを意識した経営について言及しています。

さらに、金融庁は2019年3月に金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告における提言を踏まえ、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促し、開示の充実を図ることを目的として「記述情報の開示に関する原則」を策定し、資本コストに関する経営者の考え方などを開示の好事例として公表しています。

このようなガバナンス改革や開示制度の見直しの動きを受けて、企業価値向上の必要性やそのための投下資本効率、資本コストを意識した経営が強く求められるようになっています。

現に私の感覚ですが、ROEやROICの実績及び目標値を開示する企業はここ数年で大幅に増加しており、直近では主要な上場企業の7割超が開示をしているイメージをもっています。

――投資家の目線からROEを重視する必要性は分かりやすいですが、ROICはROEとどのような関係性があるのでしょうか?

衣笠氏:
ROEが重視されている環境において、各企業においては否が応でもROEを向上させていくような経営を行っていく必要がありますが、ROEを分解すると事業に投下した資本の収益性を図るROICと政策保有株式など投融資による収益性を図る投融資収益率、そして財務レバレッジの3つに分解されます。財務レバレッジを上げることでROEを向上させることができますが、財務レバレッジは有利子負債を含む「投下資本÷自己資本」になるため財務戦略の領域、すなわち財務部門が考えるテーマです。

衣笠氏

また、投融資収益率も財務部門が主に考えるテーマになります。よって、事業の稼ぐ力を的確に評価するためには、ROEではなく負債か自己資本かにとらわれずに投資に対する稼ぐ力を見極めるためにROICを用いることが適切です。このような背景からROICが重視されている近年の流れになっていると思います。

――従来の営業利益やキャッシュフロー指標と比べて、ROICにはどんな特徴があるのでしょうか?

衣笠氏:
営業利益やキャッシュフロー指標はフロー経営指標と呼ばれていますが、フロー経営指標は経営管理の視点においては「いくら儲けたか?」で、重視するものは期間損益やキャッシュフロー、具体的なKPIとして売上高や営業利益、フリーキャッシュフローになります。

吉田

簡単な例で考えてみたいと思います。A社、B社ともに利益は100、投下資本はA社1,000、B社2,000というケースで簡易的にROICを計算するとA社10%、B社5%になります。

このケースでは、フロー経営指標で評価すると両社とも利益は同じであるためA社とB社は同じ評価になります。

一方でROICに基づいて評価すると、経営管理の視点は「元手をいくら増やしたか?」となりまして、重視するものは投資効率、具体的なKPIはROICを中心に利益やキャッシュフローを加味していくことになります。

先ほどと同様の数値例で考えますと、利益額ではなくROICでA社とB社を評価しますのでA社の方が収益性は高いと評価されます。

このようにどんな経営管理指標を重視するかでグループ会社や事業の評価も異なってきます。

表

――なるほど。経営管理指標をROICに移行することで事業運営の仕方など変化が生じてきそうですね

衣笠氏:
ROICを経営管理指標に取り入れることにより、限られた経営資源をいかに有効活用して収益を上げていくべきか、という視点が自然と根付いていきますので、結果として事業の稼ぐ力に寄与することが可能となるわけです。

また、バランスシート改善への意識が生まれることで、収益を生まない政策保有株式や遊休資産、不採算事業のスリム化が進むというメリットもあるかと思います。

但し、ROICも万能ではなく、ROICが馴染まない事業形態もあるのは事実ですのでその点は留意が必要です。

例えば、多額の資産を必要としないIT・サービス業はROICを見てもあまり意味はないですし、新規事業や市場が拡大している事業は、成長性を評価するために、売上高・利益・EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)などの成長率を重視すべきと思いますので、この点は注意が必要だと考えます。

JFEシステムズではKPMGコンサルティング様と共にお客様のご検討をサポートさせていただきます。
さらなるご関心やご不明な点がございましたら、以下よりご連絡ください。

お問い合わせ

資料請求・デモンストレーションに関するお問い合わせはこちらからお願いします。

お電話でのお問い合わせ

  • 03-5418-2437

受付時間 9時~17時30分
※土曜・日曜・祝日、当社指定の休業日を除く