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J-CCOREs 特別対談TOP Section6:原価計算の世界連結を目ざして

Section6:原価計算の世界連結を目ざして
 6回にわたるこの対談も最終回となりました。今回は、これまでの対談で明らかになった原価管理や管理会計の現状と未来を踏まえた上で、一段とグローバル化が進む日本企業が取り組むべき大きな課題、原価管理・管理会計の世界連結についてお話を伺います。

吉川氏: これからの時代、企業の生産拠点のグローバル化はさらに進むでしょう。そこで問題となるのが、海外では日本的なメンタリティは通用しない可能性が大きいことです。そのあたりをきちんとやっていく必要がありますね。
岸本氏: 我々、日本人同士なら口に出さなくても目で理解するというか、阿吽の呼吸がありますから、くどくど説明しなくても分かりますが、海外では話が違います。言うべきことを言って相手に理解させた上でなければ、思うように動いてくれないでしょうね。
吉川氏: そんなとき、理にかなった原価計算の手法で、コストについて定義できるということが強力な説得力を持ってくるでしょう。多くの言葉を費やしてくどくど説明するよりも、数値を示して納得する方が効果大だと思います。ですから、私は海外の拠点においても原価計算や会計の重要性は変わらないと思いますし、さらに原価計算の世界連結ということが必要になってくると考えます。
岸本氏: 原価管理の世界連結を目指すという観点から言えば、自社の原価管理あるいはコスト意識を世界中の他の事業所や工場にまで広げようとしても、現地の人間は日本と違ってロジックや数値を出さないと納得してくれません。社命だからとりあえず従いますというわけにはいかないんですね。
吉川氏: 外国人に納得しないやり方を強制したりすると、下手をすれば訴訟問題にもなりかねませんしね。
岸本氏: ですから、日本の本社で決めた原価計算の手法を海外の工場や事業所で行うとき、どこまでそれが受け入れられるかは難しい問題だと思います。
管理会計の観点から言えば、増えてきた海外の現地法人を国内と同じルール、同じ水準に合わせることが必要ですが、今はそこまでできていない会社が多いようです。各国の現地法人がそれぞれのルールに基づいたデータをエクセルで作成し、そういった計算結果ファイルが送られてくるのをまとめるだけ。そんな会社がかなり多いので、内部統制の問題とも絡み、今は戦々恐々としているようです。
吉川氏: 困ったものですね。もう少し積極的にデータを活用している例などはありますか?
岸本氏: 私が経験した中に、現地法人にも親会社と同じシステムを導入して実現されていた先端的な事例がありました。
現地法人ではそれぞれの原価計算を実施しますが、別途管理会計目的で原始データを本社に集め、世界連結、一気通貫の実績原価、実績採算が計算されています。この場合、通貨はドル・ベースなどに統一して計算します。日々の為替レートの問題もありますが、そこにはとりあえず手をつけないで、実績原価として積み上げるわけです。こうして、まず実績のデータとしての採算状況を把握します。次にコスト比較を行い、このラインが為替変動を加味しても有利だということになると、生産をそちらへシフトしていくわけです。

その次の段階がシミュレーションとなります。為替や生産ラインの移管、シフトなどもシミュレーションの対象で、結構ダイナミックにやられているようです。特に組み立てだけなら、設備がそんなにあるわけではなくて、コンベアさえあれば人と部品をシフトして集めるだけで簡単ですからね。経営としての原点を毎月世界連結でやっているわけです。
吉川氏: その際、現地からどのような要望や苦情などが出てくるんでしょうか? 文化の違い的なものもありそうですね。
岸本氏: 国情によっては、原価計算の理解できる人を採用することが不可能という話は聞きます。最終的に在庫評価して売上原価を出すという程度のレベルなのですが。教育水準の差もありますし、現地での人材の確保は大変だろうと思いますが、これからはしっかりと会計の教育もやらないと、企業としてのリスクが大きくなってしまうでしょう。
吉川氏: 我が国でも、最近では会計に対する関心が強くなってきています。実務中心ですが、大学でもアカウンティング・スクールがずいぶん増えました。
岸本氏: 会計の世界連結のためには、世界標準と言いますかアメリカ基準と言いますか、なんらかの基準を明確につくる必要がありますね。
吉川氏: そして原価計算や会計の世界では、世界共通言語は言葉ではなくて数字ですよ。言葉には、どうしても国によりニュアンスなどの差が出てしまいますが、同じ数字はどこの誰が見ても同じですから。国際的マネジメントの基本は、数字に置くべきだと思います。
岸本氏: 世界連結をするときの原価計算の問題は、通貨の問題が大きいですね。各国の通貨がきれいにリンクしているわけではないので。
吉川氏: あとは、原価計算や管理会計の仕組みの統一した方法をつくっておかないと。計算の仕方が各国でばらばらではよろしくないです。統一すべきものは統一しておかないと。
岸本氏: 世界連結をやろうと考えるなら、まず分かりやすくないといけません。関係者が納得のいくよう、情報が公開されていることが重要です。そして、国によっては原価や会計のプロが育っていない地域もありますので、世界連結を行う際には、基準や仕組みをある程度シンプルなものにしなければなりません。よくあるケースですが、複雑なままに連結を行ってしまうと、データが錯綜し大変なことになります。
吉川氏: 原価計算は、財務会計のように国による制度の違いという問題がありませんので、管理会計の範囲で社としての統一ルールができるわけですから、その中でよりシンプルにつくるということが重要なのですね。
岸本氏: ええ。そして、原価計算の世界連結から実績の把握、損益の把握と進み、予算管理や売価設定などを経て、経営トップのグローバルな視点からの迅速な意思決定につなげる。このサイクルを日々繰り返していけば、企業の国際競争力は自然と高まるでしょう。
吉川氏: 結局のところ、本質的な問題は、いかに原価計算や会計を正確にできる人材を育成するかでしょうね。私もアカデミックな立場から頑張っていきたいと思います。
岸本氏: 今回はどうもありがとうございました。
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プロフィール
吉川武男 教授
 1942(昭和17)年栃木県生まれ。横浜国立大学大学院教授、エジンバラ大学客員教授。専門分野は原価計算及び管理会計。主な著書は『Activity Costing for Engineers』(Research Studios Press)、『増益に直結する固定費用の管理』(中央経済社)、『バランス・スコアカード入門』(生産性出版)等。訳本として『バランス・スコアカード』(生産性出版)等がある。
岸本建彦
 神戸大学経営学部卒業後 川崎製鉄(現JFEスチール)原価課に勤務して以来、原価計算、原価管理システムに従事してきた。これまでの実績 製鉄会社だけでなく、製薬、プリンター製造、石油精製・販売でのリーディングカンパニー、電力、LSI製造、化学など多様な業種で管理会計システムを稼動させた。また、アメリカとブラジルでも、現地のSEを指導して、管理会計システムを稼動させた実績も持つ。
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