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J-CCOREs 特別対談TOP Section5:広がってゆく原価シミュレーションの範囲

ection5:広がってゆく原価シミュレーションの範囲
 今や単に過去を振り返るだけでなく、経営トップの意志決定に貢献する、未来志向の原価計算が求められています。そこで今回の対談では、将来への判断材料となる「原価シミュレーション」にスポットを当て、その概要と、広がってゆく対象の範囲について、お話を伺います。

岸本氏: それでは、すでにこれまでにも何回か出てきたことばですが、「原価シミュレーション」について簡単にお願いします。
吉川氏: これは文字通り、ある種の状況から原価をシミュレートすることです。新たな製品を売り出すときの原価標準の算定や、一部条件の変更による予定原価の算出など、用途はさまざまです。原価シミュレーションでは、経営トップが意思決定を行う際、的確な判断材料を提供するための未来志向の原価計算という意味で、いかに予定原価を正確に設定するのかということが、主なテーマになってくると思います。
岸本氏: とはいえ、原価シミュレーションというのは、まず標準の予算があって、さらに実績で見直し、さまざまなデータが揃ってからでないと計算することができませんよね。あくまでも、実績原価が判明するぐらいまで過程が進んでからの話になると思います。
吉川氏: そうですね。満足なデータがなければ正確な予測ができるはずもありませんから。
さて原価管理の差異分析というのは、既に終わった結果の実際はどうだったのかという、ある意味、反省のために行う側面があります。しかし、原価シミュレーションは、これから行う予定に活かすためのものです。たとえば、操業度がこれくらい上がるとどうなるとか、逆に予想よりも下がって8掛けくらいになったらどうなるとか、そういう仮定もできます。
岸本氏: 海外に進出している会社の場合なら、為替の問題などもありますね。
吉川氏: もし1ドルが200円になったらどうなるのかとか。これからは、同じ原価計算でも将来の原価計算が重要になってくるんじゃないかと思いますよ。
岸本氏: 同じシミュレーションといっても、さまざまなレベルがありまして、たとえば標準原価試算というのはコスト見積もりのことで、これは1品あたりの原価ということです。最近は原油やレアメタルなど原材料費が高くなっていますから、その値上がり分をどこまで売上に反映できれば収益が確保できるかという、売価試算や原価試算のウェートがかなり高くなってきています。しかし、これに関してはシンプルな仕組みで対応できると思います。
対して、全体の損益試算とかフルコストの試算では、売上や販売量を変えるということが必要になります。それに対応して各工程の操業を変化させ、シフト数を変化させて全体の整合性を持たせたシミュレーションを行うとなると、かなり複雑かつ洗練されたシステムでなければ対応できません。
吉川氏: これからは製品別だけでなく、たとえばプロジェクト別にも原価シミュレーションが必要になってくると思いますよ。操業度やキャパを上げたらどうなるか、中国に工場を移管した場合にどうなるか等々。将来的には、どこの企業も意思決定をする前に、原価シミュレーションではどういう予測が出ているか、確認する必要があるのではないでしょうか。いよいよシステムは複雑化しそうですが。
岸本氏: それこそ、データを根こそぎ集めてシミュレーションすることになります。それに加えて、時系列的な変化も考慮しなければなりませんので膨大なシミュレーションになってきます。その数値をまた判りやすく経営判断のところにフィードバックしていくことが必要になってくるのでしょうね。
吉川氏: 御社の製品でも、日本企業が海外に工場を移そうか、それとも国内の工場を拡充しようかと迷っているとき、「こうすれば原価シミュレーションが可能です」と提案できれば、プロダクトとしての評価が高くなると思いますよ。ただ製品だけを扱う原価計算ではなく、あるプロジェクトについて、こうすれば結果はどうなるという、原価計算というか原価シミュレーションが可能なパッケージソフトがあれば、世の中からものすごく評価されるんじゃないかと思います。
岸本氏:
ERP型原価計算パッケージというか、単位原価計算パッケージというものは、1品造るのにかかるコストを対象にしています。対して工程別総合原価計算といいますか、私どものモデルのような数量が扱えるものならば、シミュレーションをするときに操業度も動かせるわけです。もし販売量が変わったら、という影響を占える。こういった仕組みなら、整合性のあるシミュレーションが可能です。
吉川氏: そうすれば、全体の工程の中でコストがかかっている部分もわかり、問題の発見につながると思います。製品だけでなく、造るプロセス、工程ごとのコストまで把握できれば、コストがかかっている部分を外注して安くすませるという選択もできますよね。そういう意味での意思決定を助けてくれるシミュレーション・パッケージがあるとよいと思います。
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プロフィール
吉川武男 教授
 1942(昭和17)年栃木県生まれ。横浜国立大学大学院教授、エジンバラ大学客員教授。専門分野は原価計算及び管理会計。主な著書は『Activity Costing for Engineers』(Research Studios Press)、『増益に直結する固定費用の管理』(中央経済社)、『バランス・スコアカード入門』(生産性出版)等。訳本として『バランス・スコアカード』(生産性出版)等がある。
岸本建彦
 神戸大学経営学部卒業後 川崎製鉄(現JFEスチール)原価課に勤務して以来、原価計算、原価管理システムに従事してきた。これまでの実績 製鉄会社だけでなく、製薬、プリンター製造、石油精製・販売でのリーディングカンパニー、電力、LSI製造、化学など多様な業種で管理会計システムを稼動させた。また、アメリカとブラジルでも、現地のSEを指導して、管理会計システムを稼動させた実績も持つ。
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