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J-CCOREs 特別対談TOP Section4:損益計算と原価計算の関係とは

Section4:損益計算と原価計算の関係とは
 会計の世界も時代の趨勢にあわせ、その内容を変えていくものです。そこで今回の対談では、最近になって登場した損益計算の新しいかたちの利用法、さらに熾烈な企業間競争を勝ち抜くために必要な判断材料を提供する、未来志向の損益計算と原価計算の関係についてお話を伺います。

岸本: かつての損益計算というのは、品種別に営業利益、原価利益を計算して、それぞれが儲かっているかどうかを見るのが主流でした。従来、プロセス型産業では間接コストのウエートが大きいので軽視されてはいませんでしたが、組み立て型産業の多くでは、直接原価、粗利を計算すれば十分とされていました。しかし最近では、採算を業績評価の尺度として利用されることが増え、管理の対象が製造部門だけでなく、間接部門、販売部門、本社部門にまで広がりました。
また、国内と海外の工場が熾烈な競争をする場面が増え、間接部門費だけでなく本社費まで含めた原価、採算が重視されるようになってきていると思います。この結果、現状より間接費の管理を強化したい、間接費をきめ細かく配賦したいという要求が強くなっていると感じます。
吉川教授: 学校の授業では、製品別はもちろん部門別の原価計算も当然やっています。なぜ今ごろこんなことが評価されるのか、ちょっと不思議な感じさえします。「原価計算=製品別」というのは、もはや時代遅れではないかなと。これまでも当然、部門別の計算をやるべきだったんですよ。
大事なのは、計算して出た結果を放っておかないで、経営指標の目標を達成できたかどうかを継続的にモニタリングすることですね。ある種の成果主義的なムードが出てくれば、現場も目標への数値をきちんと計算しながら作業を進めるようになりますから。
岸本: また一方、損益計算については、過去を振り返るだけでなく、将来を予測するという要素もありますね。
吉川教授: その通りです。たとえば企業のトップから意思決定のテーマが示されたとき、必要な情報を集めて推定売上額などをはじき出し、最終的にはこれだけ儲かります、あるいは赤字になりますという予測が提供されなかったり、データに正確性を欠いたりすると、誤った経営判断が下されてしまう場合があります。
岸本: 企業を経営していく上での、判断材料の重要性ですね。
吉川教授: その重要性ゆえに、なんとなくこちらというアバウトなものではなく、さまざまな状況を踏まえ細かく計算し、こうした方がよいですよと答えられるシステムが、これからの時代には必要でしょう。たとえば海外に工場を出そうか、それとも国内にある工場の設備を拡大しようかと迷っている場合、それぞれの状況をシミュレーションした上で、損益計算書上などで正確に計算して判断材料を提供してくれるシステムです。付け加えるなら、ここで重要になってくるのが市場での勝ち負けというファクターだと思います。
岸本: もちろん他の企業も同じようなことを考えていますからね。市場で勝つという前提が「○○円より高くできない」という意味で売価設定につながって、損益管理までグルグルと回り、最終的に予算管理のサイクルとなるわけです。
吉川教授: 市場で生き残るためには適切な売価を設定しなくてはなりません。最終的に価格を決めるのは企業ではなく市場なんです。その意味では、原価から売価を決めるのではなく、売価から原価を決める時代になっているんですね。
競合する他社に勝つためには製品を差別化しなくてはなりませんが、値段を安くするにせよクオリティを上げるにせよ、製造コストがどれくらいかかって、利益はどれくらい出るのかというデータが、意志決定するために必要となります。
岸本: 決算期に終わった数値を計算するだけでなく、これからのことについて正確にシミュレートできるシステムですね。
吉川教授: 今までの原価計算は既に起こったことや終わったことを、いくらいくらかかりましたと過去形の結果を出すものでした。しかし、意思決定のための原価計算は、いわば将来の結果を出すものです。「もしこうなったらどうなる」という仮定に対し、科学性、論理性を備えたシミュレートを行い、数字を出す。こうして始めて判断材料となるだけの説得力を持つんです。
岸本: このあたりは制度会計にない部分ですが、いかにして予定原価を正確につくるのかということですね。
吉川教授: そうです。正確な予定原価をつくることができれば、「こういう前提のもとではこのような結果になる」という未来の予測が可能になります。それに沿って適切な経営計画を立てることが、これからの企業の生き残り戦略にとって非常に大きな意味を持ってくると思います。いわば損益予測に貢献する原価予測、予定原価の作成ですね。
岸本: 損益計算も過去については業績評価、将来については予定原価と、扱う範囲がどんどん変化・拡大しています。最終的には予算実績管理のようなところにくるのかな、と思いますが。
吉川教授: その予算としての未来の損益計算を正確に行うためにも、正確な予定原価を作成するという仕組みが大事になってくるのでしょうね。
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プロフィール
吉川武男 教授
 1942(昭和17)年栃木県生まれ。横浜国立大学大学院教授、エジンバラ大学客員教授。専門分野は原価計算及び管理会計。主な著書は『Activity Costing for Engineers』(Research Studios Press)、『増益に直結する固定費用の管理』(中央経済社)、『バランス・スコアカード入門』(生産性出版)等。訳本として『バランス・スコアカード』(生産性出版)等がある。
岸本建彦
 神戸大学経営学部卒業後 川崎製鉄(現JFEスチール)原価課に勤務して以来、原価計算、原価管理システムに従事してきた。これまでの実績 製鉄会社だけでなく、製薬、プリンター製造、石油精製・販売でのリーディングカンパニー、電力、LSI製造、化学など多様な業種で管理会計システムを稼動させた。また、アメリカとブラジルでも、現地のSEを指導して、管理会計システムを稼動させた実績も持つ。
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