| 岸本: |
それではまず、予算と原価の関係についてお願いします。 |
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| 吉川教授: |
会社を経営する上では、まず「会社がこうありたい」というビジョン(経営目標)と戦略を明確にし、このビジョン(経営目標)を、戦略を通して実現する経営計画を策定します。この経営計画を「ヒト・モノ・カネ」で具体化したものが予算と言えます。 |
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| 岸本: |
そうですね。ただし、実務サイドから見ると、この予算というものは、時代が変化したおかげで、単純に過去の経験知に基づき、漫然と前年度予算からプラス・マイナスするだけでは通じなくなっていると思います。ですから、現代の企業経営では、あいまいな積み増し予算ではなく、戦略志向の予算編成と予算管理が要求されているんじゃないでしょうか。 |
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| 吉川教授: |
新時代の予算編成や予算管理には、暗黙知に頼るのではなく、実際の数値を具体的に見えるようにするための、タイムリーな売上高や原価情報が必要不可欠になっていますね。
ところが実際に予算を編成する際、特に製造業で重要なことは、具体的かつ正確な原価情報があるかということですが、これが案外ありません。「こういう製品を造るときには、これだけかかる」という具体的かつ正確な製造原価情報がなければ、ビジョン(経営目標)だ戦略だと言っても、具体的な数値目標は得られず、適切な予算も組めるはずがないのですが…。 |
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| 岸本: |
私どももよく抱く感想です。予算の作成は、多くの企業で1月から2月にかけて行われ、役員会などの承認を経て成立しますが、その際、多くの企業では、各部門が売価は売価、数量は数量、という具合にバラバラな基準で作成しているのが現状ですね。製造ラインと販売数量の整合が取れているかというと、これが結構怪しい。ギリギリ、なんとか整合が取れていればよい方でしょうね。 |
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| 吉川教授: |
それは、具体的にはどのような点に表れているのですか。 |
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| 岸本: |
たとえば半期計画で、固定費は前年同期の6分の1ずつ、変動費についても賃率などは過去の経験知に基づいてこれくらいという大雑把な決め方をして、整合性を無視してつくってしまうケースが多いんです。標準加工時間に生産量を掛けて、それに賃率を掛ける。当たり前ですが予算合計に合わない。でも、もう見直さないというケースも多いです。 |
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| 吉川教授: |
| それはちょっと感心できませんね。3年先、5年先の情勢を見通すのも難しい、現在のような状況では、先ほど挙げたようなあいまいな積み増し予算ではなく、戦略志向の予算編成や予算管理が要求されます。したがって、予算編成で売価を設定する際には、これまでのような積み増し方式で自分たちが売価を設定できた時代は終わったといっても過言ではないでしょう。つまり、あくまでもマーケットの厳しい「需要と供給」の原則のもとで、適切な売価を設定しなければなりません。世界中のライバルに打ち勝つためには、「この商品は、この値段でないと売れない。だから原価をここまでに抑える」という考え方が必要なんです。言い換えれば、不幸なことですが、自分達で売価を設定できる時代は終わり、売価は与えられる(ギブンの)時代になったと思います。 |
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| 岸本: |
おっしゃる通りだと思います。そこで私どもが提案しているのが、予算の全体計画を整合性をもって作成する、ということです。それを可能にするために、製品1つあたりの原価計算ではなく、生産量から見るという、生産全体からの視点を用意しています。 |
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| 吉川教授: |
原価計算シフトでいうところの、MRP型とプロセス型の違いですね。 |
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| 岸本: |
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ええ。MRP型といわれる多くの原価計算パッケージソフトでは、製品1つあたりの加工時間や1時間あたりの加工件数などを計算するようになっています。それに対し弊社のプロセス型ソフトでは、すべての工程に投入量と産出量という関係を設定します。プロセス型の特長としては、毎回の計算に標準加工時間の歩留まりや固定費が算入されますので、損益計算につなぐことができます。その結果を見て、『製品の採算が取れていない場合、変動費だけでなく、どのラインの固定費をどこまで下げるのか』、あるいは『売価・売上について市場をどう読むか』など、経営トップが具体的に判断を下せます。そして、新しい判断に基づいて再計算をする。これをタイムリーに何度でも繰り返すことができるんです。 |
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| 吉川教授: |
これは、ある会社の社長から教わったことですが、「3日遅れの古新聞を誰が読みますか、言い換えると、1カ月遅れの損益計算書が何の役に立ちますか」と。この言に従えば、月次決算は、まだましな方ですが、ようやく導入が進んでいる四半期決算でも、経営情報としては古すぎる感じがします。
そもそも四半期決算は、決算期の初めから3ヶ月も経ち、それが決算書として出てくるまでには、決算末日からさらに1ヶ月近く経っています。その四半期決算の成績を「良いか悪いか」と言っても、その中には既に3ヶ月以上も前のデータが含まれているわけです。遅すぎますよね。ですから、理想を言えば、コンピューターのソフトを使って、日々、タイムリーに予算管理や原価管理を行うことが望ましいですね。 |
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| 岸本: |
そういうことだと思います。ただここでひとつ問題だと感じていますのは、圧倒的に多くの企業で、教科書に載っているオーソドックスな工程別製品別原価計算とは異なる計算方法が採用されているということです。
これらの企業で、総合的なシミュレーションや、予算管理、間接費の扱いなどで苦慮されている事例を見受けます。 |
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| 吉川教授: |
「企業の担当者に、教科書に載っているオーソドックスな原価計算方法が十分把握されていない」というのは意外ですね。
我々教育現場では、原価計算には少なくとも(1)財務諸表作成目的、(2)価格決定目的、(3)原価管理目的、(4)予算管理目的、(5)経営意思決定目的があることを前提に、原価計算教育を行っています。これからも、原価計算の仕組みを基礎からしっかりと学んだ人材育成に努めたいですね。 |